【 バツゲーム 】





「はい、の負け〜♪」

ガーーーン!

やっぱ、賭け事でナミに勝とうって方が、無謀だったかしら・・・

「バツゲームは、何してもらおっかな〜♪」

妙に楽しそうなナミに、黒い尻尾が見える気がする。

お手柔らかにお願いします・・・





「2人とも、そろそろ次の島に着くわよ。」

ロビンの声に、ナミと顔を見合わせ、甲板へと飛び出る。

「今度の島は、どんな島なんだろうね。」
「そうだな。」

・・・・・あれ?
何で、ナミと反対の方から声がするの?  


って言うか・・・今の声・・・


「サンジ!?」
「ん?」

私の顔を見ながら、にっこり笑う。それはね・・・反則ですよ、サンジさん・・・
赤くなってると思う顔を誤魔化す為に、再び島へと視線を向け、

「楽しみよね。」
「ああ。」

って、ナミ!ニヤニヤ笑いながら、離れて行くな〜!










「ここのログが溜まるのは、明日の夕方よ。それまでに戻って来てよ。」

ナミの言葉に頷き、皆、船を飛び出していく。
今回の船番は私じゃないし、買い物にでも行ってみようかな。

、ちょっと来て!」
「へ?」

いきなりナミに腕を掴まれ、引きずられて行く。

ど、何処に行くの?





連れ込まれたのは、女部屋。中にはロビンも居たんだけど・・・
何処にも行かないの?あ、それとも、皆でショッピングなのかな?

、バツゲーム思いついたわ!」
「はぁ?」
「サンジ君を誘って、一緒に買い出しに行って来なさい!」
「なっ!?」

い、いきなり何を言い出すのよ〜!それにロビン・・・その楽しそうな笑みは何?

「簡単でしょ♪『一緒に買い出しに行こ』って言うだけよ?」

そりゃあね・・・他のクルーが相手だったら、簡単だよ。でもね・・・

サンジだけは簡単じゃないのよ!

「このまま見てるのも、楽しそうなんだけど・・・」

・・・ロビン?その意味深な笑みは・・・?

「でも、いい加減じれったいでしょ?」
「ふふ、そうね。」

・・・・・何の話?

って、2人とも!私を見ながらニヤッと笑うのはやめて!兎に角、恐い!!!

「じゃ、そう言う事で。後でちゃんと報告するのよ!」
「楽しみにしてるわ。」
「報告って・・・」

そんな報告するような事は、おこらないわよ。

「あ、ログが溜まるの明日の夕方だから、今夜は帰って来なくてもいいわよ。」
「帰って来ます!!!!!」

何を言い出すのよ・・・ホントにもう・・・










いた・・・サンジだ・・・倉庫で食料の確認をしてるみたい。

多分、ナミとロビンは、私に切っ掛けをくれたんだと思う。私の気持ちを知ってるから。
『バツゲーム』という形で、私に誘う勇気を・・・

2人に感謝してるけど、最後の一言は余計よね。変に意識しちゃうじゃない。

兎に角、いつも通りに、かる〜く・・・・・



「サン〜ジ♪」
「うわっ!?」
「へ?・・・どうしたの?」

いくら何でも驚きすぎじゃない?そんなに食料の確認に夢中になってたの?

「いや・・・それで、どうかしたのかい、ちゃん?」

何だかちょっと誤魔化されたような気もするけど・・・

「ん?・・・今日、これから買い出しに行くんでしょ?」

とりあえず、本題よね。
後ろから、ロビンの視線感じるし・・・って言うか、何処から見てんの?

「あ?ああ・・・行くけど?」

よしっ!女は度胸だ、言うぞ!

「一緒に行っても良い?」

言ったぁ!!!

「えっ!?」

呆然としてるサンジ。
私がこんな事言うなんて、思ってもみなかったって感じだな。

「やっぱり・・・ダメ?」

これがナミやロビンだったら、2つ返事でOKなんだろうけど、
私だしなぁ・・・やっぱりダメかなぁ・・・諦めよっかなぁ・・・

「まさか!・・・ご一緒して頂けますか、レディ?」

俯きかけた私の耳に、飛び込んで来たサンジの声。

「良かった〜!じゃあ、支度してくるから待ってて!」
「ああ。急がなくていいからな!」
「うん!」





サンジと一緒に船を降りようとした時、
女部屋に居なかったから、おかしいなぁって思ってた、ナミとロビンを発見。

ナミ・・・そのガッツポーズは一体、何? 私に何をしろって?
ロビンも楽しそうよね・・・今度は2人に黒い尻尾が見えるようだわ。

これ以上は期待しないでよ、2人とも・・・





食料の買い出しなんて、今までした事なかったけど・・・

「こんなもんかな・・・じゃ、1度船に戻ろうか。」
「・・・・・」
「・・・?ちゃん?」
「こんなにあるとは思わなかった・・・」

うちのクルーって何人だっけ?

「うちには、とんでもないのが、1人いるからね。」
「あはは!確かに!」

あいつ1人で、一体何人分必要なわけ?

それにしても、今までこれをずっと1人でやってたんだ、サンジは。
言ってくれたら、いつでも付き合ったのに・・・なんて、無理か。
今だって、私には殆ど持たせてくれない。

優しすぎるよ・・・でもね、その優しさはちょっと辛いの。
皆に平等に示される、優しさだから・・・










1度船に戻って来たのはいいんだけど・・・何で誰もいないわけ?
今回の船番って、誰だっけ?



なんとなく・・・ここでも、ナミとロビンの策略を感じるぞ・・・



私は、買い出しに一緒に行きたいって言っただけだから、
買い出しが終わった今、サンジと一緒に居られる理由がない。

って、私が考えるだろうって思って、今、ここに誰も居ない気がする・・・



で、そのサンジは何処にいるのかな?



あ、いた!食料を片付けてる。どうしよう・・・言ってみようかな・・・

『船番が居ないみたいだから、一緒に残らない?』って・・・

「ねぇ、サンジ・・・」
「ん?」
「今回の船番って誰だっけ?」
「船番?」
「何かね、誰も居ないような気が・・・」

あ・・・サンジが1人で残るって言い出したらどうしよう・・・私も一緒に!なんて、変だよね。
『俺が残るから、ちゃんは遊びに行っておいでよ』とか、言いそうだし・・・

「さぁ、俺にも分からねぇが、大丈夫だろ。すぐに戻ってくるさ。」

あ、あれ?そう返ってくるとは思わなかった・・・って事は、ここで終わり?

「そうかなぁ・・・」

ああ、私も未練がましいな!仕方ないでしょ、サンジにその気がないんだから・・・

「それより、俺達も行こうぜ。今度はちゃんの買い物に付き合うからさ。」

え、今、何て・・・?一緒に居てくれるの?
あ、でも・・・誰もいないのは事実だし・・・どうしよう・・・

「でも・・・」
「大丈夫。うちのクルーに、そんな無責任な奴はいないぜ。」

そう・・・だよね。多分その辺に居るよね。
私達がここに残らなかった時の事を、ナミとロビンが考えないとは思えないし。
私も、うちのクルーに、そんな無責任な奴は居ないと思うから。

良かった・・・まだ、2人だけで一緒にいられるんだ・・・










さり気なく、私の肩に腕を回してくるサンジ。
その慣れた様子がちょっとムカツクけど、直接感じるサンジの温もりが嬉しい。

もちろん、こんな事絶対に本人には言えない。調子に乗るだけだし・・・





「じゃ〜次はね〜」
「何処へでもお供しますよ、ハニー♪」
「ば〜か!」

いつもの軽いノリだって分かってるけど、顔が赤くなるのを止められない。
肩を抱かれて街中を歩きながら、まるで恋人同士のような会話。
サンジにとっては、何でもない事なんだろうけど、私にとっては、最高のひととき。



って、何?顔に冷たい物があたった?
 
「雨?・・・って、うわっ!?」

何でいきなりどしゃ降り〜〜〜!?・・・ん?あれ?これ・・・サンジの上着?
よく見ると、サンジが私を雨から庇うように、自分の上着を。
どうしてこいつは・・・こうもフェミニストなの?

「え?いいよ、サンジが風邪ひく。」
「いいからって・・・ゲッ!」
「何これ〜〜〜!?」
「兎に角あそこへ!」
「うん!」





雨宿りの為・・・だよね、うん、雨宿りの為だ。
今、私がお風呂にお湯を張ってるのも、雨に濡れたサンジの為。

頭の中に浮かんだ、ナミの言葉を必死に消す。

『今夜は帰って来なくてもいいわよ』

そんなつもりじゃないってば〜!

いくらここが・・・宿の部屋の中だとしても・・・





「ほらサンジ!お風呂入って身体温めておいで!」
「いや、それだったら、先にちゃんが・・・」

あのねぇ・・・私がお風呂入ってどうすんのよ!

兎に角、濡れたサンジを風呂場へ放りこむ。

ふう・・・ちょっと疲れたぞ・・・

濡れてるサンジって・・・妙な色気があるんだよね・・・





「おまたせ。」
「あ、ちゃんと温まった?・・・って、サンジ?」

何で?どうしていきなり目を逸らすの?
無理矢理お風呂に放り込んだから、怒った?もうこれ以上、2人きりで居たくない?

目を背けるほど・・・私の事が、嫌い?



「あ・・・っと、じゃあ、そろそろ船に戻ろう・・・か?」

こんな風になっちゃうと、逆に2人きりな事が辛い。
顔を見るのも恐くて、視線を逸らして、そのままドアへと向かう。






このドアを開けたら・・・2人きりの時間は終わる・・・え?

サンジの手が、私の手を掴んでる。その上・・・後ろから、抱き締められてる?

「え、何?サン・・・んっ!?」

どういう事か聞きたくて、振り仰いだ私の唇を、サンジが塞ぐ。
今の状況が理解できなくて、聞きたくて、開けた口から、サンジの舌が入り込んで、

私の意識を掻き乱す・・・



深く、激しいキスに、私は朦朧としてきて・・・サンジに縋るようにしがみつく。

身体の力が抜けて・・・立っていられない・・・

そんな私を抱き上げて、そっとベッドに下ろし、サンジが覆い被さってくる。

これは・・・一体・・・何・・・?

「・・・な・・んで・・・?」

それだけを発した私に、ゾクッとするほど妖しい笑みを浮かべて、

「君が・・・悪いんだぜ。」

耳朶を甘噛みしながら囁く声に、身体が震える。でも、今の状況がどうしても理解出来ない。

「惚れた女と密室で2人きり。こんな状況に耐えられるほど、我慢強く出来てねぇんだ。」
「惚れた・・・女・・・?」
「ああ・・・俺は、に惚れてる。」

今の言葉が信じられなくて、もう1度聞きたくて、サンジのキスを止める。

「・・・ホントに?」

涙が溢れる。頭より先に、心に届いていたみたいに・・・

が好きだ。」
「私も・・・サンジが好き・・・」

両手を首に回して、ぎゅっと抱き付いたら、サンジの唇が、首筋へと下りてきた・・・















「サンジ・・・やっぱり恥ずかしいよ・・・」
「でも、歩けないんだろ?」

誰の所為だ!誰の〜〜〜!!!!!

私は今、サンジにお姫様抱っこされて、船へと戻っている。しかも!

しっかり翌朝だったりするのよね、今・・・

はぁ・・・ナミとロビンの追求が恐い・・・