【 不器用な2人 〜サンジ視点〜 】





最近、俺の機嫌は頗る悪い。



自分でも分かっちゃいるんだが、この胸ん中のモヤモヤを、どうする事もできねぇ。

このイライラの原因も分かってる。・・・目の前で繰り広げられてる光景。

まりもの横に座りこんでる・・・・・ちゃん。

ちっ、くそ・・・どうにかなっちまいそうだ・・・















「・・・またかよ。」

窓から甲板を見ると、いつものように訓練してるゾロと、その横に居るちゃん。
今すぐにでも飛び出して、この腕ん中に閉じ込めてしまいてぇ。

まぁ、そんな事は出来ねぇけどな。

ちゃんは、俺のモンじゃねぇ。あいつの事が好きなら、それを邪魔なんか出来ねぇよな。
それが俺にとって、どんなに辛くても、君の涙だけは見たくないから・・・





「・・・いいの?」
「え?」

いつの間に入ってきたのか、俺の横に立ち同じように2人を見ながら言うナミさんと、
椅子に座って、ただ黙って俺を見つめるロビンちゃん。

2人が何を言いたいのかは分かってるが・・・

自嘲気味に笑って、窓から離れる。悪ぃな、2人とも。















このところ、殆ど眠れねぇ。

昼間のあいつとちゃんの姿が、どうにも頭から離れなくて、俺の眠りを奪う。

そして今日は、昼間のナミさんの声が、頭ん中に響く。



『・・・いいの?』



いいわけねぇ!いいはずがねぇ!

すぐにでも、ちゃんを抱き締めて、息も出来ないくらい激しく口付けて、
身体中に俺のもんだって印を刻み込みてぇ!



・・・俺の理性、いつまでもつか、分からねぇな・・・















結局、昨夜も眠れねぇまま、朝を迎えちまった。

朝食の準備をしながら、外を覗う。

まりもの横にいるちゃん。それを確認するだけだと分かっちゃいるのに、それでも・・・

君の顔が見たいんだ。



・・・・・ちゃん?・・・泣いて?



あのやろう!ちゃんに何しやがった!










ちゃん!?」

両肩を掴むと、弾かれたように顔を上げる。
その瞳には、決して見たくはなかった、涙・・・・・このやろう!

「てめぇ!ちゃんに何しやがったぁ!!!」
「うるせぇ!何かしてんのは、てめぇじゃねぇか!」
「何わけの分かんねぇ事言ってやがんだぁ!」
「サンジ君!やめて!違うの!」

ゾロの胸倉を掴み、殴りかかろうとする俺を、必死で止めるちゃん。
何で俺を止めるんだ!泣かされてんのに・・・それでも、そんなにこいつが大事なのかよ!

「何が違うんだ!現に今、泣いてるじゃねぇか!離してくれちゃん!」

1発でいい!こいつを殴らせろ!

「この涙は自分の所為なの!それと・・・サンジ君の所為なの!」
「・・・・・え?」

俺の・・・所為?俺、ちゃんに何かしたか?
俺が見た時、ちゃんは既に泣いてたんだぜ。なのに、俺の所為?
どっちかと言えば、俺の方が君に泣かされて・・・



・・・自分の所為で、俺の所為・・・まさか?ちゃん・・君・・・?



「ちょっとおいで。」

ちゃんの腕を掴んで・・・何処に行こうか。

ここでこれ以上問い詰めるのは、ダメだ。
どうにもさっきから背中に、『興味津々』と分かり過ぎる視線を感じるからな。

倉庫あたりが・・・妥当だな。















先にちゃんを倉庫の中に入れて、後ろ手で扉を閉める。

「俺の所為って、どういう意味だ?」

彼女の身体がビクッと震えたのに気付くが、止めてやる事は出来ねぇ。

「それは・・・」
ちゃん?」

早く先が聞きてぇ・・・俺の考えが間違ってなけりゃあ、君は・・・

「サンジ君が・・・」
「俺が?」
「全然嫉妬してくれないから!・・・だから・・・」

真っ赤になって、顔を背けるちゃん。くそ可愛いぜ!



ダメだ!我慢出来ねぇ!



腕を掴み、引き寄せて抱き締める。
ずっとこうして・・・俺の腕ん中に、掴まえたかったんだぜ。

「サ、サンジ君!?」
「・・・してたよ、ずっと・・・」
「え?」
「ゾロを蹴り倒して、すぐにでも君を、この腕の中に捕えたいって、ずっと思ってたんだぜ。」
「・・・本当に?」

俺の腕の中から、顔だけを上げ、不安気に見つめる。

その顔は・・・反則だ。

そんな顔で見上げる、君が悪いんだぜ。

「ああ。」

その言葉と共に、そっと口付ける。最初は軽く、そして次は深く求めちまう。

「じゃあ、どうしてそうしてくれなかったの?」

恥ずかしさからか、頬を赤く染め、少し拗ねたように呟くちゃん。



・・・そんなに俺の理性を壊してぇのか?



「君が好きなのは、ゾロだと思って我慢してた。」
「違う!私が好きなのは・・・」

すぐに否定するだろうと思い、わざと出したゾロの名前。
思った通りの反応を返してくれた事に、顔がニヤケちまう。
けど、こんな顔を見られたら、また拗ねちまうから・・・この顔を見られないように抱き締め、耳元で囁く。

「分かってる・・・好きだよ、。」
「私も・・・サンジ君が好き。」

その言葉と、背中に回された温かい腕に安心しちまったら・・・
やべぇ・・・俺、最近寝てなかったんだ・・・



「なぁ、膝枕してくれねぇか?」
「えぇ!?」
「・・・ダメか?」

いくら何でも、いきなり膝枕は無理だったか?って・・・え?

少し離れた所にペタンと座り、自分の膝をポンポンと叩くちゃん。

・・・くそ嬉しいぜ。ちくしょう、顔の筋肉が元に戻らねぇ。






横になった俺の髪を、優しく梳くちゃんの手を感じながら、目を閉じる。

もう、決して手放せない存在。これからもずっと、俺の傍で君を感じさせてくれ。

愛してるぜ。俺の・・・俺だけの