【 キスマーク 】





ん〜〜〜・・・ヤバイ・・・ねむ・・い・・・・・









テーブルに突っ伏して眠ってしまったを、優しい瞳で見下ろしているサンジの表情に、
苦笑が交じる。

「・・・人の気も知らねぇで、気持ち良さそうに・・・」

少し開いている唇から、視線を逸らす事が出来ない。

ちゃん・・・俺も、男なんだよ・・・」

そう呟きながら、引き寄せられるように顔を近づけ、唇を重ねる。

「んっ・・・」
「っ!?」

の声に、ハッと我に返り離れるが、当の本人はまだ夢の中。
その様子に、サンジはホッとしたような、残念なような複雑な気持ちに陥る。

そして、ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべると、
のTシャツの襟元に指を掛け、少しずらしてそこに口付ける。










見えそうで見えない、ギリギリの場所についた、紅い痕。


























「んっ・・・ふぁ〜〜〜・・・ん?」
「おはよう、ちゃん。」

へ?何でサンジが?って言うか・・・ここは・・・キッチン?
・・・あぁ、そっか、あのまま寝ちゃったんだ。

・・・ん?

ありゃ、サンジが上着を掛けてくれてたんだ・・・落としちゃったよ。

「サンジ、これありがとう。」

上着を返しながらお礼を言うと、

「どういたしまして。」

とか何とか言いながら、優しく笑う。
うっ・・・その笑顔は反則だってば〜〜〜!
誰にでも向けている笑顔だって分かっていても、やっぱり嬉しくなってしまう。
多分、顔も赤くなってるだろうから、気付かれないうちに、離れなくっちゃ!










サンジは多分、ナミが好き。

ロビンや私、それから他の女の子達との態度とは、あきらかに違う。
それが分かっているから、困らせたくはないの。

だから・・・この想いは、心の奥底に隠そうって、決めた。










「あっ!〜〜〜おっそいじゃない、何やってたのよぉ〜〜〜!」

女部屋に入った途端、ナミからあがる抗議の声。



それにしても・・・



「ロビン・・・一体ナミにどれだけ飲ませたのよ・・・」
「ふふっ。」

こらこら、笑って誤魔化さない!





、あなた今まで何処に・・・誰といたの?」

は?何、突然?

「・・・これ。」

ロビンが私の襟元に指を掛け、くいっとずらす。

「何、どうしたの?って・・・!それキスマークじゃない!?」

・・・・・・・・・・はい?

「ちょっとぉ!一体誰につけられたのよ!」
「だ、誰にって・・・」

キスマーク? いつ? 何で? 誰に? え〜〜〜???

鏡の前に立って、自分でも確かめてみる。
これは・・・確かに・・・キスマークだ・・・よね?

「身に覚えがないの?」
「・・・・・ない。」
「今まで一体何処に居たのよ。」

原因の分からないキスマークの所為で、ナミの酔いもすっかり冷めたみたい。
2人とも、真剣な顔をして、私を見てる。

「・・・・・キッチン。」
「何してたの?」
「居眠り・・・・・」
「そこにコックさんは?」
「・・・・・いた・・・・・」
「決まりね。」
「ちょっと待ってよ!」

いくら私が居たのがキッチンで、そこにサンジが居たからって、
それだけでサンジだと決めつけるなんて・・・

「だって、サンジ君しか考えられないじゃない。」

ナミ・・・あなたがそんな風に言ったら、サンジ可哀相だよ・・・

「それにね、。」

言いながらロビンが、私の襟元をずらす。
それ、やめようよ・・・かなり恥ずかしいから・・・

「船長さん、長鼻くん、船医さんは、こんな事思い付きもしないでしょうし、」

確かにそうだと思うけど、その断言はちょっと・・・

「剣士さんなら、多分・・・ここにつけると思うわ。」

そう言いながら、私の首筋の真ん中を指差す。

「こんな微妙で、いやらしい場所につけるのは、コックさんしか考えられないわね。」
「でも・・・サンジがこんな事をする、理由がないでしょ?」

相手がナミなら兎も角、私なんだよ?
・・・って、2人ともどうしたの?
驚いたような、呆れたような顔で、私を見る2人。

・・・あんた気付いてなかったの?」
「え?・・・何を?」

大袈裟に溜め息をつくナミ。だから、一体何なのよぉ!

「兎に角、真相を確かめてきたら?」
「あっ!それ良いわね!」



・・・何だか、と〜っても嫌な予感が・・・



「じゃ、、行ってらっしゃい♪」
「何処によ〜〜〜!」
「サンジ君の所に決まってるでしょ!」

言いながら、私の背中を押すのはやめてよ〜〜〜
ロビンも楽しそうに笑ってるだけだし・・・私にどうしろって言うのよ!

「『私にキスマークつけたのサンジ?』って聞けばいいじゃない。」
「聞けるわけないでしょ!!!」
「後で報告するのよ!!!」



人の話を聞け〜〜〜〜〜!!!!!




















結局、あのまま女部屋から追い出され、私は再びキッチンの前。



・・・なんだけど、中に入れない・・・



だって、何て聞いたらいいの?絶対違うのに・・・
サンジのはずないじゃない。

彼が好きなのは・・・だから・・・

分かっているから聞くのが怖いんだ、多分・・・










「あれ、ちゃん。忘れ物?」

いきなりキッチンの扉が開いて、中からサンジが顔を出す。
驚いて顔を上げたもんだから、しっかり目が合っちゃって・・・思わず逸らしちゃった。
・・・変に思った・・・よね?



でも・・・顔を上げられないよ・・・



「その様子だと・・・気付いちゃったんだね、ここ。」



「っ!?」



サンジの指が、真っ直ぐ私の襟元を指す。その場所は・・・

「ホントに・・・サンジなの?」
「俺以外いないでしょ。」

少し軽い言い方に、ズキッと胸が痛む。
サンジにとっては、ただのからかい。遊びだったんだと思って顔を上げたら、

「・・・サンジ?」

どうして、そんな切なそうな・・・苦しそうな顔をしているの?

「俺の目の前で、他の男になんて、指1本触れさせたりしねぇ・・・」

な、何・・・?いつもと様子が違う?でも・・・

「そうよね、サンジは女の子皆に・・・」
「違う!!!」

私の言葉を遮るかのような、サンジの怒鳴り声に、身体がビクッと震える。

「ごめん・・・でも、いい加減にしてくれ・・・」
「・・・どうした・・・の?」

キッチンの中へと戻り、ドサッと椅子に座って、煙草に火をつける。
こんなサンジ・・・初めて見た・・・










私、何か思い違いをしていたの?ナミはさっき、何て言ってた?

・・・あんた気付いてなかったの?』

気付く?何に?・・・サンジの・・・気持ちに・・・?

これって、自惚れてもいいのか・・・な?










「・・・サンジ・・・」
「俺・・・君が好きだ・・・」

目の前に立った私と目も合さずに・・・ずるいよ、そんなの・・・

「ごめんな、それ、嫌だったろ?」
「・・・うん。」
「・・・そうだよな・・・ごめん・・・」
「サンジじゃなきゃ、嫌だった。」
「え?」

サンジの瞳に、涙を浮かべた私の姿が写る。
やっと・・・私を見てくれた・・・

「他の人じゃ、絶対に嫌だと思った。」
「・・・ちゃん?」

そっと伸びてきた手が、私の頬に触れる。
その手を両手で包んで、そこに口付ける。
ずっと触れたかった・・・サンジの手。

「君の気持ちを・・・聞いてもいい?」
「・・・ずるい・・・」
「え?」
「ちゃんと言って?私を見て・・・もう1度・・・言って・・・」





・・・俺は、お前が好きだ。お前だけを愛してる。」
「私も・・・貴方だけが好き、愛してる・・・」





その言葉と同時に、強く抱きしめられる。痛いほど強く・・・















「俺、もう1つ懺悔しなきゃいけねぇんだ。」
「もう1つ?」
「そう。」

私を抱き締めたまま、ニヤッと笑うサンジ・・・な、何?

「俺がキスしたの、そこだけじゃねぇんだ。」
「は?・・・ここだけじゃないって・・・」
「そう、ここにも・・・な。」

そう言いながら、唇を塞がれる。



・・・ やられた ・・・



「どうしてこんなのつけたのよ。」

すっごく恥ずかしかったんだからね、ロビンに見付かった時!

「牽制と・・・願望?」

・・・はい?

「俺、もうあんまり待てねぇから。」
「な、何の話よ!」
「ん?・・・隙を見せたら、押し倒すぜって話。」
「なっ!・・・んっ!?」

抗議の言葉を唇で塞いで、

「覚悟しとけよ・・・」

そんなセリフを耳元で囁くな〜〜〜!