【 真実の想い 】 「、この島のログは3日で溜まるから。」 「了解〜!それまでに戻ってくればいいのね?」 「そういう事。」 今回の船番はナミらしい。 すっかり寝こけてた私を残し、他の皆はもう既に行っちゃったみたい。 薄情だよな〜あいつら・・・ 「さてと・・・どうしようかな。」 お金もあるし、買い物でもしようかな。 「よう姉ちゃん、いくらだ?」 なっ!?・・・・・はぁ??? いきなりガバッと肩を抱いて、んなとんでもないセリフを吐きやがる馬鹿は、 1発殴ってやろうと、見上げた私の目に飛び込んできたのは、 ニヤニヤ笑ってる、見知った顔。・・・何考えてんの、この男は・・・ 「エース・・・」 「よう。久し振りだな。」 その久し振りの挨拶がわりに、今、何って言ったのかしら? 「・・・・・誰がいくらだって?」 「だったら、いくら出したって、構わねぇぜ・・・?」 って!人の耳を舐めるな〜〜〜〜〜!!! 「ここに黒ひげが居たの?」 「いや、ここには情報収集に寄っただけだ。」 「ふ〜ん・・・」 「お前は?」 肩を抱かれたまま、顔を覗き込まれる。 いきなりの至近距離はやめようよ・・・思いっきり、心臓に悪い・・・ 「ここのログが溜まるまでに、後3日って事よ。今日着いたんだけどね。」 「おっ!じゃあよ、今夜と明日の夜は、一緒にいられんだな?」 ちょっと待て!どうしてずっとエースと一緒にいるの?それに・・・ 何で夜限定なのよ、この男は〜〜〜! エースと一緒に歩くのは、かなり目立つ。 彼が上半身裸だからってのもあるけど、それより何より、背中の刺青。 白ひげ海賊団の一員である証・・・ まぁ、振り返る女性の場合は、エースが良い男だってのもあるんだろうけどね。 この刺青が、彼と私の立場の違いを思い知らせる。 白ひげ海賊団2番隊隊長、火拳のエース。 このまま、ルフィ達の船に乗ってても、シャンクス達の船に戻っても、 いずれ敵対するかもしれない男。 例え、初めて会ったあの日から、どうしても忘れる事が出来なかったとしても、 彼に惹かれている自分を、自覚していたとしても、 どうにもならない事だから、決して私の気持ちを悟らせたりしない。 「おい、飯でも食いに行くか?」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ エースと・・・ご飯・・・? 「え〜〜〜嫌!」 「何で、んなに嫌がんだよ、傷付くぞ!」 「だって、エース寝ちゃうし・・・」 食べてる最中だろうが、話してる最中だろうが、寝ちゃうんでしょ? それはやっぱり、嫌だよな。 「寝ねぇよ。」 「うそつき。」 「嘘じゃねぇよ!」 プイッと横を向いてしまう、エース。 え・・・?エースが拗ねた? 「エース?」 「んな事したら、お前・・・居なくなっちまうかもしれねぇじゃねぇか。」 「え?」 ゆっくり視線を私へと戻すエースの表情は、切なそうで、寂しそうで、頼りなさげで・・・ これが、火拳のエースなの? 「なぁ・・・どうやったら手に入ると思う?」 「何を?」 「を。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ これは・・・一体、何? 真っ直ぐ私を見つめるエースの瞳は、真剣そのもの。 こんなに真剣に、必死に、彼は私の何を手に入れようと言うの? 「俺は海賊だ。欲しいもんは奪ってでも手に入れる。けどな・・」 そっと私の頬に触れるエースの手。逸らす事の許されない瞳。 どうしよう・・・溢れ出してしまいそう・・・ 「それは、どうやったって奪えねぇ・・・俺は、どうすりゃいいんだ?」 「エース?・・・一体、何の話を・・・?」 「・・・ちょっと来いよ。」 私の手を掴んで歩き出す。これ以上、彼と一緒にいるのは危険。 そう私の心が警報を鳴らすけど、この手を振り解く事がどうしても出来ない。 ・・・ここまで彼に溺れていたなんて・・・ 少し小高い丘まで来ると、エースは私の手を離して座り、 私に隣に座るように促す。 「俺、最初に言ったよな?」 「何を?」 「に、『俺と一緒に行かねぇか』ってよ。」 っ!?それは・・・私がどうしても忘れられなかった言葉。 冗談だと分かっていても、それでも消えなかった。 「エース・・・?」 ダメだ!!! 声が震えてる! エースに気付かれてしまう! ほら・・・訝しげに私を見つめるエースの瞳に、隠してた真実が写る・・・ どんなに口説かれても、何とかかわしていたのに、こんなのはずるい。 そんな風に、エースの弱さを見せるのは、ずるい・・・ 傍に居たいと思っている、この気持ちを隠し通す事が出来なくなってしまう。 「・・・お前?」 エースの腕がゆっくりと伸びてくる。 逃げなきゃいけない!捕まったらもう・・・後戻りは出来ない。 分かっているのに、そう思っているのに、どうしても身体が動いてくれない。 彼の腕が私を捕らえ、その胸の中へと閉じ込めてしまう。 痛いほど強く抱き締められて、身動き1つ出来ない。 「このまま攫っちまいてぇ・・・」 耳元で囁かれた言葉にビクッと身体が震え、反射的に顔を上げる。 「今、無理なのは分かってる・・・」 何時の間にか溢れていた涙を唇で拭い、そのまま口付ける。 だめだ・・・もう・・・限界・・・ 「・・・好き・・・エースが好き・・・」 「ああ、俺もだ。・・・お前が好きだ。」 「私・・・船に戻るね。」 ログが溜まるには3日かかる。だから今すぐ戻る必要なんてないんだけど、 これ以上一緒にいると、離れられなくなるから・・・ 「そうだな、今抱いちまったら、3日じゃ離せねぇ。」 ・・・・・は? 「何で、いきなりそんな話になるのよ!」 「あたりめぇだろ。俺がどれだけ我慢してたと思ってんだ。」 「そんな事言われたって・・・」 「初めて会ったあの日に、押し倒してやろうかと思ったんだからよ。」 「なっ!!!?」 ニヤッと笑って、私に素早くキスをすると、 「次に会った時には掻っ攫う。覚悟しとけよ!」 覚悟って・・・一体、何の覚悟? 次にエースと会うまでに、私がしなければいけない事は・・・ ルフィ達の説得だよなぁ〜・・・これが1番の難問だ。 それでも、1度溢れ出たこの想いは、もう隠す事は出来ないから。 貴方について行くわ、エース。傍に居たいから・・・ |