【 特  別 】





う〜〜〜眠れないよぉ・・・



起き上がって周りを見たら、気持ち良さそうに眠ってる、ナミとロビン。
ちくしょう・・・起してやろうか・・・



やめとこう・・・どっちも後が恐い・・・



う〜ん、どうしようかなぁ・・・ここで寝転がってゴソゴソやってたら、
どっちにしろ起しちゃいそうだし。
それだったら外に出て、ちょっと風に当たって来ようかな。


そ〜っとベッドから起き出して、上着を羽織り、音を立てないように注意しながら、部屋を出る。










・・・・・・・・・・寒っ!

夜の海を甘く見てたなぁ・・・毛布も持ってくれば良かったかな。
今日の見張りは・・・ウソップかぁ・・・
上がって、毛布ぶん取ってやろうかしら・・・





ちゃん?」

へ?どっから声がしてんの?あっ!

「サンジさん!」

丁度キッチンから出てきたのかな・・・って事は、今までやってたのか。
ん?『おいで、おいで』ってしてる・・・何?

「そんな格好じゃ寒いだろ。中に入れば?」

はい、寒いです。でも・・・

「サンジさん、今から寝るんじゃないの?」
「いや・・・・・」

・・・そこで止まられると、どう解釈すればいいのか分からないのですが・・・?

ちゃんこそ、どうしたのこんな時間に?」

あっ、誤魔化したな!

「ちょっと眠れなくてね・・・」
「じゃあ、ミルクでも温めようか?」
「わっ!ありがと〜、お願いしたい!」
「了解!」

う〜ん・・・仕事の終わったサンジさんに、時間外労働させてる気分だ・・・
でも、こんな風に2人っきりになれるチャンスは少ないから・・・ごめんね。



「あれ、サンジさんも飲むの?」

マグカップ2つに、ミルクを注いでるサンジさん。

「ああ、飲みたかったんだよ、実は。」
「そっか・・・良かった。」
「え?」
「ううん、何でもない!」

サンジさんがミルクを温めてくれたら、『先に寝ていいよ』って言うつもりだったから。
もう少し一緒に居られる事が、嬉しい。

「・・・なんてな。」
「え?」
「こうすれば、ちゃんともう少し、一緒に居られるからな。」
「・・・サンジさん?」

私の心の声が、聞こえたわけじゃ・・・ないよね?
って事は、いつものヤツか・・・サンジさんって、誰にでも優しいし、こういう事言っちゃう人だもんね。
それが分かってるのに、『嬉しい』と感じてる自分がいる。



・・・何か、悔しい・・・



「私もね、サンジさんと2人っきりで居られて嬉しいよ。」

うわっ!すっごく恥ずかしい!!!

サンジさんって、どうしてこんな恥ずかしい事が、サラッと出来ちゃうんだろう。
やっぱり、本気じゃないから・・・かな。



・・・って、え?



「サ、サンジさん!?」

口元押さえて、顔を逸らしてるけど・・・どう見ても、顔が赤い???

「あ、あの・・・」
ちゃん・・・」
「は、はい!」
「反則だ。」
「・・・はぁ?」

何が反則なんだろう・・・?
あっ!もしかしたら、サンジさんって、言うのは慣れてるけど、言われるのには慣れてない、とか?
う〜ん・・・





「っ!?」

そんな事を考えてる間に、いつの間にか私の隣に座ってたサンジさん。
肩を抱かれるくらいは別にいいんだけど、突然顔を覗き込むのはやめて!
いきなりの至近距離は、心臓に悪いんだからぁ!!!

「なぁ・・・1つ聞いてもいい?」
「・・・何?」

今の私の顔、絶対に真っ赤だって自信があるから、それを見られないように俯いたまま返事をする。
まぁ、相手はサンジさんだもん、気付いてるだろうけど・・・

「何で、俺だけサンジ『さん』なんだ?」
「はぁ???」

思わず顔を上げ、まじまじとサンジさんの顔を見つめると、今度はサンジさんの方が視線を逸らす。

「他の奴らは全員呼び捨てなのに・・・」

そういえば、確かにサンジさん以外の事は、全員呼び捨てにしてるなぁ。
ルフィにゾロ、ウソップ、チョッパー、それからナミとロビン


・・・見事に全員だ。


「俺・・・ちゃんに嫌われてる?」
「違うっ!」

自分の声の大きさに驚いて、思わず口元を押さえる。
でも・・・でも!

そんな誤解はされたくない!

「本当に嫌ってなんかいないよ!むしろ逆で・・・」
「え?」
「え?って・・・え?・・・あぁ!?」

・・・今、どさくさに紛れて、パニックついでに、何か言っちゃったぁ!?

「あ、あの、今のは・・・違う・・・わけでもないんだけど・・・いや、その・・・」

うわぁ〜〜〜ん!何、言ってんだぁ〜私〜〜〜!

「・・・今のは?」

サンジさんの手が伸びて、私の頬に触れる。
今まで、1度も見た事ないような、優しくてそして・・・嬉しそう?

「あの・・・忘れて?」
「無理。」

うっ・・・そんな、極上の笑顔で、間髪入れずに却下しなくても・・・

「どうして?」
「好きな人に、意味深な事を言われて、忘れられる男がいるわけないだろ?」
「・・・え?」
「好きだ。・・・だから、ちゃんの呼び方だけが、どうしても気になったんだ。」

そのまま唇が重なった。・・・これは、現実?

目を閉じる事も忘れて、ゆっくり離れていくサンジさんの唇を見つめてしまう。

ちゃんの呼び方が、俺だけ他人行儀な気がして、嫌だったんだ。」
「そうじゃなくて・・・」

何てサンジさんに説明したらいいのか、分からない。
呼び捨てに出来ないのは、意識しすぎて、恥ずかしくて・・・だから、なんだけど。
そんな事、それこそ恥ずかしくて言えないし・・・でも、何か言わなきゃ離してくれそうにないよ。

頬に触れてる指先が、俯く事さえ許してくれない。
強い力で押さえられてるわけじゃないのに、サンジさんの瞳から、目を逸らす事が出来ない。
見えない何かで縛られ、捕えられてしまったかのよう・・・



ちゃん・・・?」



優しい声に促され、自然と口が開く。

「特別・・・だから・・・」
「特別?」

コクンと頷く。私にとって、特別なのは、サンジさんだけだから・・・

だから、サンジさんが好きなのは、ナミだと思ってた。
私やロビンは『ちゃん』なのに、ナミだけ『さん』だから・・・

そうサンジさんに言ったら、驚いたような顔をして、そしてクスッと笑った。

「嫉妬・・・してくれてたんだ。」
「そりゃあ・・・」

真っ直ぐサンジさんが見れなくて、俯いてしまう。

「俺だけじゃなかったんだな。」
「え?」
「ナミさんや、ロビンちゃんにまで、嫉妬してたんだぜ。」

私の顎に指を掛け、上を向かせて見つめ、ニヤッと笑う。
そんなサンジさんにドキッとしてしまい、今また・・・真っ赤だよ、私・・・

「ナミやロビンにまで・・・?」

頷きながら、唇に軽くキス。









「それじゃ俺は、これからは  って呼ぶぜ。」
「え?」

気が付いたら、サンジさんの両手は私の背中に回ってて、耳元から声がする。
これって・・・抱き締められてる?

「基本的に、俺は女性は呼び捨てにしない主義だが・・・」
「うん。」

そういえば・・・聞いた事無い。

だけは、特別だから。」
「サンジさん・・・」
「だからも、俺以外を『さん』付けで呼ぶなよ。」

サンジさんの背中に腕を回して、ギュッと抱き付き、コクンと頷くと、
私の身体を抱き締めてるサンジさんの腕に、力が篭った。




私が、さん付けするのは貴方だけ。そして、貴方が呼び捨てにする女も私だけ。
お互いが、特別である証。



「なぁ・・・今夜はこのままここで、一緒に寝るか?」
「・・・は?」
「まぁ、眠らせはしねぇけどな。」
「なっ!?」
「どうする?」
「部屋に戻って寝ます!!!」
「残念。・・・それは次の機会にな。その時は、逃がさねぇぜ。」



『おやすみ』と言いながらキス。でも・・・
眠れるわけないじゃない!サンジさんのバカ〜〜〜!!!






ここまで読んで下さってありがとうございました。
このお話は、血の繋がらない双子の姉の瑠衣に押し付けたものです(爆)
なので、このヒロインちゃんは瑠衣をイメージしております(連載のヒロインちゃんとは、微妙に違ってると・・・^^;)
って事で、サンジの呼び方が『サンジさん』なのです。
↑の話のまま、瑠衣はサンジだけ『サンジさん』って呼ぶんですよね〜沙姫は呼んだ事ないです(笑)
パニックついでにドツボに嵌るのも瑠衣の特徴です♪