【 強 さ 】





ここは無人島。
たった今着いたばかりなのに、赤髪海賊団の面々は、既に宴会の準備を始めてる。

まぁ、いつもの事なんだけどね。



さて・・・と、どうしよっかな。



宴会の準備を手伝ってもいいんだけど、ちょっとその辺を歩いてみたいんだよね。

よしっ、聞いてみよ!

「シャンクス〜!」
「どうした、?」
「ちょっと散歩してきてもいい?」

私の言葉に、スッと周りに視線を走らせ頷く。

「ああ、構わねぇだろう。だが、遠くへは行くなよ。」
「うん!」

やったね!お許しも出たし・・・

「おい、!」
「ん?」

ベックマンに呼び止められた。・・・何?

「これも持って行け。」

ポンッと投げられたのは・・・私の銃。
一応剣は腰に差してるんだけど、両方持ってた方が良いって事かな。
まぁ、何があるか分からないもんね。

「何かあったら撃て。それで大体の位置は分かる。」

「・・・了解。」

それって・・・つまり・・・結局、ベックマンも過保護なんだよね。





















いつも海の上にいる所為か、こんな風に森の中を歩くのは、かなり気持ち良い。



と・・・あれ?



私の目の前を、トコトコと2本足で歩いてる・・・トナカイ?



トコトコって言うより、フラフラって感じだけど・・・チョッパー?・・・まさか・・・



「・・・チョッパー?」

私の声に、ここからでも分かるくらいビクッと身体が震え、恐る恐るって感じに振り返る。

「・・・・・・?」

あ、やっぱりチョッパーだ・・・って、えぇ!?

!!!」

私の顔を見るなり泣き出して、抱きついてくるこの状態は・・・まさか、迷子なのか?





とりあえず、抱きついてくる背中をポンポンと叩き、落ち着かせる。
今のままじゃ、全く状況が掴めない。

ゆっくり離れていくチョッパー。落ち着いた・・・かな?

「チョッパー、もう大丈夫?」
「うん。大丈夫だ。」
「こんな所で、1人でどうしたの?」
「うっ・・・」

あちゃ、また涙がジワ〜ッと・・・

「俺・・・皆とはぐれちまったんだ・・・」



・・・はぐれた・・・?



つまり、ゴーイングメリー号と1本のロープで繋がれた小船のような物に、チョッパーは1人で乗っていて、
つい・・・眠ってしまった。

で、気が付いたらロープが切れてて、海の上を流されてた。

そしてそのまま、この島に辿り着いたって事か。

皆、捜してるんだろうな〜今頃・・・










・・・俺、どうしたらいいんだ?」

まぁ、ナミが潮の流れを読んでここまで迎えに来てくれると思うから、

「大人しく待ってなさい。」
「分かった!」



ぐぅ〜〜〜



「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

今のは・・・チョッパーのお腹の音?

「・・・・・・」
「分かった、分かった。」

笑いを噛み殺しながらチョッパーを抱き上げ、シャンクス達の所へ戻る。
あそこなら、食べ物はいっぱいあるからね。




















森を抜け、目に飛び込んできた大勢のごつい兄ちゃん達に驚いて、チョッパーが私にギュッと抱きついた。

「大丈夫。私のもう1つの仲間達だから。」

にっこり笑って安心させた所に、

「おっ!食いもん獲って来たのか!」
「それ、丸焼きにすんのか?」
「うまそうだな〜〜〜」

などと言う声が届き、震え上がって私にしがみつく。



こいつら・・・



ここで降ろしたら、ホントに食べられちゃいそうだよね。





真っ直ぐシャンクス達の所へ行き、そこに座ったんだけど・・・チョッパーが離れない。

「ただいま。」
「おう・・・何くっつけてんだ?」
「チョッパー。ルフィ達の仲間よ。」

「「「「 へぇ 」」」」

・・・あっさり納得しちゃったよ、こいつら・・・



って言うか・・・



「そうかぁ、ルフィの仲間かぁ!ほら、飲め飲め!」



・・・ずいぶんと気に入ったらしい・・・





「なぁ、なぁ!」
「ん?」

やけに嬉しそうだね、チョッパー。

「俺の事、怖がらねぇ!」
「は?」
「気持ち悪がらねぇ!」
「・・・」
「驚きもしねぇ!」



・・・確かに・・・



チョッパーが2本足で歩こうと、しゃべろうと、驚いたり固まってたのは下っ端連中だけで、
シャンクスや幹部連中にいたっては、当り前のように受け入れてた。

「まぁ、こいつらの方がよっぽど化け物だしね。」
「そうなのか!?」
「そうよ〜、ルフィやゾロ、サンジよりもね。」
「えぇ!?」

「本物の、大海賊だしね。」

「っ!?・・・おう!!!」

ニヤッと笑った私に、チョッパーが嬉しそうに頷く。・・・ん?

「褒められてんのか、けなされてんのか、分からねぇな。」

頭の上から声がして、見上げると・・・シャンクス。
それに・・・ベックマン、ルウ、ヤソップまで、ニヤニヤしながら私を見てる。

「別に。事実を言っただけよ。」

「「「「 ほぉ 」」」」

な、何よ・・・



「なぁ、・・・」

チョッパー?
4人の視線も、私からチョッパーへと移る。

って、この世界の人間じゃないんだよな?」

見上げてくるチョッパーに、コクンと頷いて答える。

「最初から、そんなに強かったのか?」
「ううん。ここに来るまで、剣にも銃にも触った事もなかったよ。」
「じゃあ、どうやってそんなに強くなったんだ?」

・・・え?

「チョッパー?」
「俺、強くなりたいんだ。」
「・・・・・」
「大事な人を・・・その大事な人の大事な物を守りたいんだ。」
「チョッパー・・・」
「守られてるだけなんて嫌なんだ!俺も頼られる男になりたいんだ!!!」










「どこかで聞いたな。」

うっ・・・

「ああ、聞いたな。」
「聞いた聞いた。」
「俺も聞いたぜ。」

ええい!やかましい!!!





『守られてるだけなんて嫌!私も皆を守りたい!』





そう言ったのは私。だから、チョッパーの気持ちはよく分かる。

「・・・?」
「ねぇチョッパー、ルフィは強いと思う?」
「うん、強いよ!」

そう・・・ルフィやゾロ、サンジ、ロビンは強い。でもそれは目に見える強さ。

「じゃあ・・・ウソップは?」

「ウソップも強いよ!!!」

間髪入れずに戻ってきた言葉に、笑みが浮かぶ。これなら大丈夫だ。

「そりゃあ、ルフィ達とは違う。ああいう強さじゃねぇ。でも、ウソップもすげぇ強ぇんだ!!!」

チラッとヤソップを見ると・・・ははは、親父の顔してるよ、嬉しそう。

「だったら、大丈夫だよ。」
「え?」
「チョッパーは、強さとは何か知ってる。守りたいモノもある。そして、強くなりたいって思ってる。」
「うん。」
「だったら、大丈夫。」

小首を傾げて私を見上げる。意味が分からないらしい。

「チョッパーは強くなれる。」
「ホントか!?」
「今のその気持ちから、逃げない限りね。」
「っ!・・・俺、絶対に逃げねぇ!」
「そして、頑張り続ける限りね。」
「俺、頑張る!」
「だったら、大丈夫。」
「おう!!!」











ルフィ達の匂いに気付いたチョッパーに、私達と会った事を口止めして別れる。

今はまだ、会う時ではないから。

次に会う時には、今よりもっともっと強くなったチョッパーに会えるだろう。

う〜ん、今から楽しみだ♪