【 永  遠 】






私達はここから始まったのよね・・・





「ここにいたのか。」

後ろからゆっくり回ってきた腕に手を添えて、はその主を仰ぎ見る。

「葉月くん。」

「葉月・・・?」

いきなり昔の呼び方で呼ばれた珪は一瞬困惑したが、すぐにその表情は笑顔に変わる。

「そうだったな。おまえは俺の事を『葉月くん』と呼んでいた。」

の髪に軽くキスを落として珪は、そっとから腕を離すとその横に立ち、

肩に腕を回して目の前の教会を見る。

幼い頃、珪とが出逢い、別れ、そして再び出逢った場所。

「中に入ってみるか?」

珪のその誘いをが断わるはずもなく、教会の中へと入っていく。



あの日と同じで、何故か鍵は開いていたから・・・



「懐かしいね・・・」

あの頃と、幼い頃一緒に遊んだあの頃と、全く変わっていない気がする。

そう・・・あの卒業式の日とも・・・



色々な事が想い出され、の瞳に涙が浮かぶ。

その涙を指で優しく、そっと拭う珪。そしてそのまま抱き締める。

珪の胸の中に優しく包まれて、の涙は止まらない。

「私・・・あなたに逢えて良かった。本当に・・・」

泣きながら顔を上げ、笑いながら言う

「俺もだ・・・おまえが傍にいる、それだけで・・・他には何もいらない。」

抱き締める腕に力を込め、切なげに囁く珪。そこだけ時間が止まっていた。










「あんまりここにいたら、怒られちゃうかな?」

まだ涙の残る瞳で悪戯っぽく笑うに珪も、

「そうだな。理事長が来て掴まる前に出るか。」

そう言って、きれいにウインクを決める。

思わず赤くなってしまったを、楽しそうに見つめながら外へと促し、教会の扉を閉める。


「そろそろ帰るか。」

差し出された珪の手に自分の手を絡めて、はもう一度教会を振り返る。

「どうした?」

「ううん、何でもない。さぁ、帰ろう。」



歩き出したは、心の中で呟いた。




どうしても今日、ここへ来たかったの。

あなたと出逢い、別れ、再会し・・・全てが始まった場所だから。

『俺たちの永遠をここからはじめよう。』

そう言ってくれたあなたの言葉を、もう一度かみ締めたかった。



私は明日、『葉月 』になります。

あなたとの永遠を続ける為に・・・あなたの傍にいる為に・・・