【 宿命 H 】






トトの村を出て、真っ直ぐミューズ市へと向かう。



27の真の紋章の事は、結局2人には話せないまま・・・
まぁ、2人に宿ってる紋章が、真の紋章だと決まったわけじゃないし。
紋章を見たって、私には分からないし・・・










「やっと・・・ミューズ市に着いたね。」

以前来た時は、ナナミとザムザのおかげで『ミューズに着いたぁ!』って感じはなかったけど、
今回は、本当に『やっと・・・』って感じがする。





門の所に同盟軍の兵士みたいな人が立ってる。前は居なかったのに・・・
それだけ今は、状況が緊迫してるって事か。



・・・・・だけど・・・・・



「通行証の無い者を入れるわけにはいかん!」

通行証って・・・んなもん何処で発行してるのよ。
それに、あの戦火の中で、悠長にそんな心配して用意周到に持ってる方が、
どう考えたって怪しいと思うけど・・・・・んな事も分かんないのかねぇ・・・



・・・・ナナミ?何を始める気・・・?



ばっ!この兵士、よりにもよってナナミに何て事を・・・
ヤバイ・・・これ以上はマズイ・・・ナナミが爆発する・・・それ以上、何も言わない・・・・・

あちゃ・・・言っちゃった・・・

って、頭抱えてる暇なんかなかった!!!

!ジョウイ!ナナミを止めて!!!!!」





「ナナミ・・・門番相手に喧嘩したって仕方ないでしょう。」
「だって!あいつが!」
「だってじゃない!」
「・・・ごめんなさ〜〜〜い・・・」

呆れた顔してナナミを見てる、とジョウイに視線を移して、

「これから、どうする?」
「トトの村からここへ来るまでに、宿屋みたいな所があったから、そこで考えようよ。」

へぇ・・・そんなのあったんだ。・・・君、良く見てるね。
お姉さんは全く気付かなかったよ・・・










へ〜〜〜、本当に宿屋だ・・・で、今から部屋に案内してもらうって時に、

誰だろう・・・このおっさん・・・

ふぅ〜ん、宝捜しねぇでも、奥さんはそんな事より・・・って、もういないや。
慌ただしい人だなぁ、奥さんも大変だ。



翌朝、宿屋から出ようとしたら、ご主人が戻って来たんだけど・・・

「どうしたんだろ、出て行った時とは全然表情違うよね。」

が小声で話し掛けてくる。は『どうしたんだろ』って言ってるけど・・・
私には、何となく分かる。だってあの人、人手を集めてくるって言って出て行ったのに、
1人で戻って来たもの・・・きっと、信じてもらえなかったんだと思う。
宝捜しなんて・・・夢物語だもの。



・・・・・やっぱり・・・・・



ナ、ナナミちゃん・・・?いきなり人の話の中へ入って行って、しかも・・・
通行証を貸してくれって・・・いくら何でも・・・

って、交換条件だすわけね・・・

「へぇ〜面白そうだな、手伝うよ。」

・・・・・本気?
宝捜しだぁ〜!って浮かれてるナナミ。
私・・・どうしたらいいの?

「この子は連れて行けないな・・・ヒルダ、預かっておいてくれよ。」

そう言いながら、ピリカちゃんを抱き上げたご主人に、

「あっ!じゃあさんも一緒に!」

・・・ジョウイ・・・私も一緒に預けられるの?

「ピリカ1人じゃ心細いと思うし、さん・・・怖いんでしょ?」

あう・・・図星です・・・だって、モンスターとか出てきそうだし・・・



宝捜しへと出て行くあの子達を見送って、私達は宿屋の中へと戻る。
ピリカちゃんも心配なのか、不安なのか、私にぴったりとくっついたまま。

「大丈夫よピリカちゃん。ジョウイ達、直ぐに戻ってくるからね。」

しゃがんでピリカちゃんに視線を合わせ、安心させるように、にっこり笑いながら言うと、
私の服を掴んでいるピリカちゃんの手が、少し緩む。
やっぱり私、残って良かった・・・



「あなたが一緒に行かなかったのは、この子の為?」

ヒルダさんが、ピリカちゃんの頭を優しく撫でながら聞いてくる・・・んだけど・・・

何故?寂しそうな笑顔・・・

「それもありますけど・・・私、戦えませんから、足手まといになるだけなんです。」

1番の理由はこれ・・・私が一緒に行くと、彼らは私を庇いながら戦う事になる。
どんなモンスターがいるか分からないのに、それはあまりにも危険。

「そう・・・あなたもなのね・・・」

え?・・・私『も』?

「本当は、ヒルダさんも一緒に行きたいの?」
「あの人を守れるのなら・・・ね。でもこの子もいるし、それに1番望んでいるのは・・・」

それは聞かなくても分かるよ。あなたを見ていれば・・・

「家族が皆、元気で一緒に居る事・・・でしょう?」

私の言葉に、やっぱり寂しそうに笑って頷く。

「ええ・・・お金なんてなくてもいい。そんな事よりも・・・」
「大丈夫。直ぐに気付いてくれますよ。」
「そうだといいのだけど・・・」

だって、あの人も結局は家族の為だもの。
今は目先の物に捕われて、自分を見失っているみたいだけど、大丈夫。
何か切っ掛けさえあれば、きっと気付ける。

自分にとって本当に大切な物は、何なのかと言う事に・・・

それに・・・

「夢を追う心を持ち続けてる、ご主人の事が、好きなのでしょう?」
「それは・・・ね。」
「ごちそうさま。」

顔を見合わせて吹き出す。いいなぁ・・・お互いを想い合ってるご夫婦って・・・



「さてと、私はそろそろ仕事をしないと。」

・・・ん?さっきまで、あの寂しそうな笑顔に気を取られて気付かなかったけど、

「ヒルダさん・・・顔色悪いですよ、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。少し疲れているだけだと思うから。」

あんの馬鹿亭主!自分は宝捜しに夢中で、妻の体調にも気付かないなんて!
それにこの宿屋、全部ヒルダさんが1人でやってるみたいだし、疲れも溜まるよね・・・よしっ!

「台所の片付けは私がやりますから、少し休んでて下さいよ。」
「え?お客様にそんな事・・・」
「あら、私はここに預けられてる身ですからね〜それくらいさせて下さい。ね?」

ウインクしながらそう言うと、ヒルダさんはクスッと笑って、

「それでは、お願いしようかしら。私は、部屋の掃除をしてきますから。」

だぁ・・・いや、だからね、少し休んでてってば・・・もう、仕方ないなぁ・・・

「じゃあ、ピート君とピリカちゃんは、お掃除のお手伝いしてくれる?」
「うん!」

元気に返事するピート君と、コクンと頷くピリカちゃん。

余計な仕事増やしたような気も・・・しないでもないけど・・・





「よいしょっと・・・こんなもんかな。」

何とか台所は片付いたと思う。
だけど、ここだけでもかなり大変だよ。いくら慣れてるとはいえ、1人でなんて・・・



「 ヒ ル ダ ! ! ! ! ! 」



え?今の声は馬鹿亭主?戻って来たんだ・・・ヒルダさん?・・・・・一体何が?



急いで台所から出ると・・・ナナミが仕切ってる。
男連中はアタフタしながら、ナナミに従ってる。ナナミ強い・・・って、
そんな事、感心してる場合じゃなかった。

「ナナミ、ヒルダさんどう?」
「ひどい熱だよ。こんなの初めて見た・・・」

私・・・ヒルダさんの顔色悪いの気付いてたのに・・・もっと早く休ませてれば・・・





「どうしようさん・・・熱下がらないよ・・・」

アレックスさんやピート君の前では、気丈に振舞ってるナナミが、小声で私に話し掛けてくる。

ナナミ・・・震えてる・・・

ナナミを励まそうと顔を上げると、が部屋から出て行こうとしてる姿を見付けた。

「ナナミちょっと待ってて。?」

部屋を出た所でを捕まえる。こんな時に、何処へ?

「シンダルの秘宝って、薬草だったんだ。」

薬草・・・?秘宝が?

「宝箱の中には、望むもの、大切なものが入ってるって・・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「その薬草は何処?」
「アレックスさんが、遺跡の入口の所に・・・」

の背中をポンと押し、

「取っておいで!」
「うん!」

走り出す
ヒルダさんの熱は下がらない・・・今は何にだって・・・・・





が持って帰ってきた薬草を、アレックスさんがヒルダさんに飲ませる。

お願い・・・どうか・・・効いて・・・





ヒルダさんがゆっくり目を開ける。意識もしっかりしてるみたいだし。

「ヒルダさんの熱、すっかりひいてるわ!」



・・・・・良かった・・・・・



あれが切っ掛けで、アレックスさんも漸く気付いたみたい。
『自分にとって、本当に大切なもの』が何なのかを・・・・・




















アレックスさんから、通行証を預かったのはいいんだけど・・・

「ねぇ、さん・・・」
「何、・・・ジョウイも?」

とジョウイが私にコソコソ近付いてくる。何なのよ、君達・・・

「あの通行証って、アレックスさん一家のだよね?」

それなんだよね・・・ナナミ、どうする気なんだろ・・・?



・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?



ナナミがヒルダさんで、がアレックスさん〜〜〜?んで、ジョウイがピート君・・・
それ以外は同行人ねぇ・・・人選ミスだよ、ナナミちゃん・・・

「ちょっと待ってよナナミ!ピートって、僕よりピリカの方が・・・」
「ピリカちゃんは女の子でしょ。無理があるわよ。」

ジョウイがピート君ってのは、それ以上の無理があると思うけど・・・

さん!眺めてないで助けてよ!」

助けを求めてくるジョウイ。何とかしてあげたいんだけどね・・・
今のナナミに、何を言っても無駄でしょう。

「あのナナミを止められる?君の方が付き合い長いでしょう。諦めなさい。」
さん・・・他人事だと思ってるでしょう・・・」

気のせい。気のせいだよ、ジョウイ。





・・・やっぱり、結局捕まっちゃうのね、私達・・・





はぁ・・・ここで一晩頭冷やせねぇ・・・まぁ、野宿よりはマシだけど・・・
あの子達、大丈夫かなぁ・・・別々の牢に入れられちゃったのよね。
4人が一緒の牢に入れられてたのは見届けたんだけど、





喧嘩してなきゃいいけど・・・





そういえば、こんな風に1人になったのって、ここへ来て初めてかもしれない。
私、これからどうなるんだろう。何処へ行くんだろう。
何の為にここにいるの?誰の為に・・・?

・・・分からない事ばっかり・・・

でも、不思議と怖くない。
今私は、1人じゃないって感じてるから・・・かな。





「お〜い、!生きてるかぁ?」

・・・朝っぱらからやかましい・・・しかも、何て挨拶だ!

「お前・・・本気で寝てたな?」

何よフリック、その顔は!牢の中で爆睡しちゃ悪いか!

とりあえず、ベッドから下りて、のび〜〜〜〜〜身体中が痛い〜〜〜!

達は?」

未だにあの子達の声が聞こえないって事は、居ないって事だもんね。

「先に出した。レオナが酒場を開いてんだ。そこへ行かせた。」

ふ〜ん、レオナってば、ここでも酒場開いてんだ。

「あいつらには、ちょっと用事があるんでな。」

それで先に出したわけね。で、私はこれからどうすんの?
そう思いながら2人を仰ぎ見ると、フリックが私の頭をクシャッと撫でて、

「お前は、俺がレオナの所へ連れて行ってやるよ。」

はい、宜しく〜〜〜ん?あれ?

「ビクトールは?」
「俺は、市庁舎へ行って、あいつらを待たねぇといけねぇんでな。」

市庁舎?って・・・行っちゃった・・・

「ねぇ、何で市庁舎?」
「ああ、あいつら4人を、ここの市長に頼むって言ってたぜ。」

あ、なるほどね。ここであの子達を守ってくれるんなら、安心だよね。

「本当は、お前の事も頼みたかったんだが・・・」

ああ私はね・・・ここの世界の人間じゃないからね・・・

「書類上にお前の名前が残っちゃ、マズイんだろ?」

う〜ん・・・多分・・・でも、

「あの話、信じてくれてるんだ。ありがと。」

そう言いながらフリックを見上げて、にっこり笑ったら、

「ほら、行くぞ!」

さっさと歩き出しちゃった。けどさぁ・・・耳まで赤いよ、フリックさん!





「レオナ!」
!無事だったんだね、心配してたんだよ。」

私をカウンターへと促すレオナ。そして出されたものは・・・やっぱりお酒。

「それじゃ俺達は、兵隊集めに行ってくっからよ。」



へ?今の声は・・・



「ビクトール!・・・何時戻ってたの?」

驚き顔の私に、ニヤッと笑ってフリックと一緒に出て行く。
質問には、答えてくれないらしい・・・

ん?私の腰に抱き付いてんのは・・・

「ピリカちゃん!?」

何で?どうしてピリカちゃんだけがここにいるの?
そっかぁ・・・市庁舎には、一緒に行かなかったって事か・・・
後ろの椅子を引っ張ってきて、ピリカちゃんを座らせる。

「じゃあ、一緒にジョウイ達が戻ってくるのを待とうね。」





「あっ!さ〜ん!」

おっとぉ〜!3人のお帰りですね。
ビクトールとフリックが出て行ってる事は、レオナが伝えてくれてる。

「実は、僕達・・・・・」

え?偵察?王国軍駐屯地の?

君達・・・ハイランド軍に、面割れてるんじゃないの・・・?

「少しでも・・・皆の力になれたらと思って・・・」

・・・ジョウイ・・・










とジョウイは偵察の為、ナナミは『心配だから』と、ついて行った。
私とピリカちゃんは、今回もお留守番。それはいいんだけど・・・

どうしてこんなに不安なの?

どうしてこんなに胸騒ぎがするの?

皆・・・早く帰って来て・・・無事な姿を見せて・・・










「「さん!!」」

!ナナミ!・・・・・・・・・・どうしたの?
無事この酒場へと戻り、私の元へと駆け寄ってきた2人の顔は、
今にも泣きそう・・・それに・・・ジョウイは・・・?

「・・・・・?」
「ジョウイは・・・僕を助ける為に・・・囮に・・・」
「っ!!・・・何で?・・・見付かったの?」
「・・・ラウド隊長が居て・・・」

まぁたあの米つきバッタか!!!





話を聞いたビクトールが、達を連れて、市庁舎へと怒鳴り込んで行ったけど、
結局、助けには行けないらしい・・・

どうか・・・どうか・・・ジョウイ・・・無事でいて・・・





「・・・。」
「・・・フリック・・・」

酒場で座っていた私の向かい側の席に、フリックが座る。

「飲むか?」

本当は首を横に振りたかったんだけど、あまりに心配そうなフリックの瞳に負けて、
『少しだけ』と、グラスを貰う。

「フリック・・・」
「ん?」
「待つのって・・・辛いね・・・」
・・・」

フリックが席を立ち、横へ来てそっと私の頭を抱き締める。

・・・やめてよ・・・今、こんな風に優しくしないで・・・

そう思いながらも、フリックから離れる事が出来ない。

私の瞳に、涙が溢れそうになる。

・・・嫌だよ・・・泣きながら待ちたくなんて・・・ないのに・・・





「・・・さん・・・」

っ!?今の声は・・・

「ジョウイ!!!」

ジョウイだ・・・ジョウイがいる・・・私の目の前に立ってる・・・生きてる・・・
顔を見た瞬間、何とか止まっていた涙が、再び溢れる。
でも・・・今度の涙は、無理に止めようとは思わない・・・

「・・・お帰り・・・」
「・・・ただいま・・・」

そう言いながら泣く私を、そっと抱き締めてくれるジョウイ。
良かった・・・本当に良かった・・・










ジョウイは無事私達の元へと戻って来た。それは嬉しいんだけど・・・

あれからジョウイの様子がおかしい・・・

王国軍の足止めに成功したその夜、

「では、そのように伝えて下さい。」

・・・?今のは・・・ジョウイの声?隣の部屋から?

「承知。それでは。」

え?誰かと一緒?
不思議に思って、隣の部屋へと入ってみる。

「ジョウイ?いるの?・・・っ!?」
さん!?」

部屋に入った瞬間、何かが消えた。確かに・・誰か・・・居た・・・

「・・・ジョウイ、今誰かと一緒だった?」
「え?い、いや・・・僕1人だよ。」

私から目を逸らして、そう答えるジョウイ。
君・・・一体、何を隠しているの?何を抱えているの?

さん・・・」
「何?」
「僕は・・・正しい道を、選び取れるかな?」
「え?」
「ううん、何でもない!それじゃ、おやすみ。」
「・・・おやすみ。」

・・・・・ジョウイ、ねぇ知ってる?
私の胸騒ぎは・・・君達が戻って来ても、一向に治まらないんだよ・・・










さん、朝だよ、起きて〜!」

・・・ナナミ・・・朝から元気だね・・・
昨夜は、ジョウイの行動が気になって、殆ど眠れなかったんだよね・・・
、ジョウイも叩き起こして、階下へ行く。

「おっ!お前らも起きたか。」

下の酒場には、ビクトールとフリックが座ってんだけど・・・朝っぱらからお酒なわけね?

も一緒に飲むか?」
「朝っぱらから飲まないよ。」
「真っ昼間からなら飲むけどな。」

やかましい!この世界に来てから、この2人とよく飲んでるからなぁ・・・
元の世界じゃ、そんなには飲んでなかったのに・・・まぁ、嫌いじゃなかったけどね。

「今日は、アナベルの所へ行くんだろ?、お前も一緒に行くのか?」

どうしよう・・・ジョウイの事、この2人に相談してみようかな・・・
私じゃ、どうにもならないし・・・

「私、ここに残るから、3人で行っておいで。」
「え?さんもやっぱりお酒飲みたいの?」

・・・やっぱりって・・・何?

「今日の話は、私分からないから。」

そう・・・これは事実。とナナミのおじいさんの事は、何も知らない。
だから、その答えに3人は納得し、酒場から出て行った。それを見送ってから・・・

「レオナ、私にも!」

「・・・やっぱり飲むんじゃねぇかよ・・・」





「で、どうしたんだ?」

椅子に座るなり、そう切り出してくるフリック。

「何か話があるんじゃねぇのか?」

はぁ・・・お見通しですか・・・

「うん・・・ジョウイなんだけど・・・偵察から戻ってきてから、どうもね・・・」

レオナが出してくれたお酒を、ちびちび飲みながら溜め息をつく。

「2人も、ジョウイの事・・・気をつけといてくれないかな?」

頷いてくれる2人に、少し安心する。
私の・・・思い過ごしなら良いんだけどね・・・





さん、ただいま〜!」

あれ?もう帰ってきたの?私、まだ殆ど飲んでないよ?

「早かったな。どうした、会えなかったのか?」

私の代わりに、フリックが聞いてくれた。

「会えたけど、何か揉めてたみたい。夜になったら、またおいでって。」

ふ〜ん・・・この後に及んで、まだ状況を把握してない方がいらっしゃるって事か。

「夜は、私も一緒に行くわ。」
「「うん!!」」

私の横をピリカちゃんが擦り抜けて、ジョウイの所へ・・・・・ジョウイ?
ナナミにピリカちゃんの相手を頼み、出ていくジョウイ。

「・・・確かに、おかしいな。」

私の耳元で、呟くように言うフリックに、コクンと頷く。





ピリカちゃんの相手をナナミに任せ、と一緒にジョウイを捜しに行く。

「ジョウイ・・・何処に行ったのかしらね?」
「うん・・・あっさん、あそこ!」

が指差す先には、ジョウイと・・・あれは・・・忍者?

・・・さん・・・」

私達が近付くと、ジョウイは辛そうな顔をする。

「今の人・・・誰?」

そう問い掛けるに『今は言えない・・・』とだけ。そして、私達に逃げるように促し、

「もし・・・僕が死んだら・・・ピリカの事を頼む。」
「なっ!?」

それだけ言うと、走り去って行くジョウイ。

一体、君の身に何がおこっていると言うの・・・?





酒場へ戻り、ナナミも連れてアナベルさんの所へ行く。
ジョウイは・・・まだ戻っていなかった・・・





市庁舎へ行くと、ジョウイが先に来ていると言う。

・・・嫌な予感がする・・・

!ナナミ!急ごう!!!」










・・・・・遅かった・・・・・










目の前には、倒れているアナベルさんと、その前に立つジョウイ。
その手には、ナイフが握られている・・・

「すまない・・・・・・」

そう呟くと、走り去って行くジョウイ。

ジョウイ・・・