【 宿命 G 】 「敵襲だぁ!!!!!」 ・・・来た・・・とうとう来たんだ・・・あの、ルカ・ブライトが・・・ 怖いよ・・・身体が震える、足が動かない・・・どうしよう・・・ 「、支度出来たか?」 ノックの音と共に、部屋の中に入ってくる声。 「フリック・・・ビクトール・・・」 振り返り、彼らを見上げる私は、よっぽど情けない顔をしてるんだろうな・・・ 2人の表情で分かる。 「何て顔してやがるんだ、お前は!」 「だって・・・」 ビクトールが私の頭をポンポンと叩く。・・・あなた、これ好きだよね・・・ でも、これで落ち着いてくる自分もどうかと思うわ。 1度俯いて目を閉じ、再び開けて2人を見上げたら、あからさまにホッとした顔をする。 私・・・そんなに酷い顔してたの? 「もう大丈夫みたいだな。」 確認してくるフリックに、コクンと頷く。 「それじゃ、お前の任務を伝える。」 はい?私の任務? って言うか、私何時の間に同盟軍に入ってんの?いや・・・今更だけどさ・・・ 「お前は、このまま砦に残れ。」 へ? 「どう考えたって、足手まといだろうが。」 ・・・確かに・・・ 「あいつらに取っても初めての戦闘だ。お前を守りながら戦う余裕なんかあるはずないだろ。」 うん・・・そんなの命取りにしかならないよ。 「俺らもな、あいつらを守るので手一杯だ。」 そりゃそうだろう・・・そう思って、2人を真っ直ぐ見つめて頷いたら、 ま〜た、あからさまにホッとした顔をされた・・・私が駄々をこねるとでも思ってたんかい! 「「「さん!!!」」」 「、ジョウイ、ナナミ。」 「一緒に行かないって本当なの?」 心配そうな顔をする3人に、私は出来るだけ安心させるように笑う。 「ピリカちゃんと一緒に、ここで待ってるから、必ず私達の所へ帰ってきてね。」 私のその言葉に、力強く頷く3人。 「さん、ピリカの事・・・」 「任せて!」 ジョウイが、安心したように笑いながら頷いて、3人は集合してる兵士達の中へと入って行く。 ・・・・・皆、気を付けて・・・・・ ピリカちゃんと2人、大人しく砦で待ってよう・・・なんて考えてた私が浅はかだったわ。 だって、ここは戦場だもの。怪我人が出るのよ。 「!そこの布取っとくれ!」 「これ?」 「そう、それだよ!」 大量の布を持って、バーバラの元へと行き、 「ここに置いといたんでいい?」 「ありがとよ。」 布を置いてから、台所へと静かに・・・走る!!! 沸かしておいたお湯を持って戻り、 「レオナ〜!これ、何処に置くの?」 「こっちに頼むよ。」 「了解!」 大人しく座ってる暇なんかありゃしない。 時々、隅に座ってるピリカちゃんを確かめながら、走ってる。 本当は、こんな場所に連れて来ない方がいいのかもしれないけど、1人になんてしておけないし、 それにね・・・彼らは『生きよう』としているから・・・ 必死に生きようとしている姿。これを見せなきゃいけない気がしたの。 「・・・、あれ。」 「え、何?・・・ピリカちゃん?」 部屋の隅に座っていたはずのピリカちゃんが、1人の兵士の元へと歩いて行き、そこにしゃがむ。 「お兄ちゃん・・・痛い?」 「ん・・・大丈夫だよ・・・」 声を掛けられた兵士は、痛みに顔を顰めながらも、笑顔で答える。 するとピリカちゃんは、兵士の頭を優しく撫でる。 「・・・ありがとう、お嬢ちゃん・・・」 「うん。」 「あの子は・・・優しい子だね。」 「本当に・・・」 1度は勝利して戻ってきたんだけど、撤退したはずの王国軍が再び攻めてきた。 「、この砦もヤバイかもしれない。直ぐに脱出出来る様に準備しときな。」 「・・・分かった。」 レオナの言葉に頷き、1度部屋へと戻る。 纏めておいた荷物を持って、皆がいる部屋へと戻り、手当てを続ける。 ・・・ジョウイ・・・ナナミ・・・フリック・・・ビクトール・・・ 皆・・・無事でいてね・・・ 「ピリカちゃん!何処?ピリカちゃん!」 やっばいなぁ・・・何処行っちゃったんだろ・・・さっきまで其処に居たのに・・・ 2度目に攻めてきた王国軍を防ぎ切る事が出来ず、砦の中に侵入されてしまったみたい。 脱出しようとした所で気付いたの、 ピリカちゃんが居ない! 地下にも、1階にも居ないって事は・・・ 「・・・上か・・・」 階段を上がった所で、子供の泣き声が聞こえてくる。 迷わず真ん中の部屋を開けると・・・ 「ピリカちゃん!!!」 「おねぇちゃ〜〜〜ん!」 泣きながら抱き付いてくるピリカちゃん。 良かった・・・無事で・・・ 「さん!ピリカちゃん!」 「ポール!」 彼はが捕虜の時に、すごく良くしてくれたらしく、かなり懐いてるから、私達とも仲良くなった。 ちょっと頼りないんだけどね〜でも、優しい子。 「まだこんな所に!早く逃げないと!」 「うん、ごめん。すぐに行くわ。・・・ポールは?」 「最後の点検ですって、いいから早く!」 は、はい!直ぐに逃げま・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うそ・・・ 「・・・見つけた・・・」 「・・・ルカ・ブライト・・・」 全身が凍りついたような感覚。これが・・・恐怖? こわい・・・怖いよ・・・本当に恐い・・・でも、そんな事言ってられない。 私の腕の中にはピリカちゃんがいる。この子を守らなきゃいけない。 その思いから、私はキッとルカを睨み付ける。 この人に、ひれ伏すわけにはいかないから! 「・・・きさま?」 ・・・ルカ・・・? 不思議な何とも言えない表情をして、ゆっくりとルカが近付いてくる。 「さん、危ない!」 ポールが私達を庇うように、私の前に立つ。 ルカと私の間に・・・ダメ・・・いけない・・・ ルカがハッと我に返ったように、ポールを視界に入れる。 いや・・・ダメ・・・ポール・・・逃げて! 「やめてぇ!!!!!」 ルカの剣がポール目掛けて振り下ろされる。 咄嗟にピリカちゃんを抱き締めたけど・・・この子の目は、全てを見てしまった・・・ 恐怖に怯え、泣き出すこの子に・・・今、何って言った? 耳障り?楽しみを邪魔するな?・・・ふざけないでよ! 「・・・何て事を・・・子供の目の前で何て事するのよ!」 「やかましい!」 私達に向かって、ルカの剣が振り下ろされ・・・・・あれ? 「!ジョウイ!」 2人が、辛うじてルカの剣を止めている。2人掛りでも止めるのが精一杯なんだ・・・ 「さん早く!」 「ピリカを連れて逃げて!」 「これで、こいつらを助けたつもりか?」 え? その言葉と同時に、ルカの剣を止めていたとジョウイが弾き飛ばされる。 これが・・・実力の違いってやつ?なんて、呑気に考えてる場合じゃないってば! 「痛いっ!何するのよ、離してよ!」 ルカに手を掴まれ、私の身体はピリカちゃんから引き剥がされる ・・・何する気よ・・・ 「よく見てろ。これが強者が弱者を奪う瞬間だ!!!!!」 何を!? ルカの剣は真っ直ぐピリカちゃんを狙っている。 ピリカちゃん自身は、あまりにもの恐怖の所為か全然動かない。泣きもしない。 やめて!これ以上、この子を傷付けないで! 「ピリカちゃん!!!」 「やめろぉ!!!!!」 ジョウイと私の声が重なる。お願い・・・やめて!!! 「こっちだ!!!早く来い!!!」 今にもルカが剣を振り下ろそうとした時、大爆音がして・・・ ・・・ビクトール?・・・フリック? 「も!呆けてねぇで、さっさと来い!」 ピリカちゃんを抱き上げたフリックに手を引かれて、我に返る。 ・・・逃げなきゃ!!! 火炎槍を地下のボイラーに全部投げ込んだぁ?とんでもない事しやがるな、こいつら・・・ でも、あれは確か・・・オデッサの・・・ そう思って、フリックを見たら・・・それに気付き、優しく微笑む。 うっ・・・格好良いじゃないか・・・ 「直ぐに爆発が始まる、急ぐぞ!」 ちょっ、ちょっと待ってよ・・・足が縺れて・・・ 「何なら、抱っこしてやろうか、?」 ・・・結構です!こんの・・・セクハラ熊!!! 「急げ!逃げ延びたら、ミューズで落ち合おう!死ぬなよ!!!」 ビクトールの声を背に走る。あなた達も、死なないでよ!!! 「砦・・・燃えちゃったね・・・」 「ナナミ・・・」 無事砦を脱出し、森の中を走る途中で、ナナミの声に皆の足が止まる。 「大丈夫か、ピリカ?」 そして、ジョウイの声で皆の視線はピリカちゃんに集中したんだけど・・・・・ 「ピリカちゃん?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「ピリカ?まさか・・・声が・・・」 うそ・・・今のルカの所為?だって、あの直前まで確かに喋ってた・・・ 私が引き剥がされ、ルカの剣がピリカちゃんを狙った時・・・ この子、泣き声さえ出していなかった・・・ううん、出せなかったって・・・事? 「お願いだよ・・・『お兄ちゃん』って呼んでくれよ・・・ピリカ・・・」 ジョウイ・・・ピリカちゃん・・・ごめんなさい・・・私、頼まれてたのに・・・ 「私が・・・守れなかったから・・・」 「違う!僕が・・・僕が守り切れなかったから・・・」 「ジョウイ・・・」 「さんの所為じゃない!僕が・・・」 ビクトールが『ミューズで落ち合おう』って言ってたから、ミューズへ向かう事にしたんだけど、 ミューズへ行くには、トトの村を通るしかないらしい・・・ 今のピリカちゃんを連れてトトの村に行くのは、もの凄く酷な事だと思うけど・・・ 「ねぇ、他に道はないの?どんなに遠回りでも・・・」 ナナミに聞くと、彼女もしゅんと項垂れて、 「うん・・・ないの・・・」 そっかぁ・・・通るしかないわけね。仕方ないか・・・ 「ピリカ?」 トトの村に入った途端、ピリカちゃんが1人で歩いて行く。 後を追いかけたら、ピリカちゃんの家の丁度裏手にある・・・洞窟? 「これ・・・ほこら?」 へ?ほこら・・・?ねぇ、・・・ほこらって、祠? あっ!またピリカちゃんが中へと入っていく。 追いかけなきゃ! ・・・・・・・・・・この祠?の中に、ピリカちゃんは居たんだけど・・・ 何だか訳有りって感じだよね・・・ここ・・・ あ・・・ジョウイ、!あんまり迂闊に近寄らない方が・・・えっ・・・? 「、ジョウイ!?・・・・・さ〜〜〜ん!?これ、何???} とジョウイが・・・消えちゃった?・・・って、あれ? ・・・戻って来た・・・ これは、何? 戻って来た2人の右手の紋章・・・ 普通の紋章がこんな所で宿るわけない。それに、右手・・・ まさか・・・27の真の紋章なの? の宿した・・・テッドから受け継いだ、あのソウルイーターと同じ? 真の紋章・・・ソウルイーターは、宿した者の近しい人の魂を掠め取る・・・ じゃあ、この2人の紋章は? それに、真の紋章の1番の呪いは・・・年を取らない・・・不老不死のはず・・・ テッドはあの姿のまま、300年も・・・ この子達は、それを知ってるの? ・・・あなたはこの世界にいるの?今、どうしてるの? 教えて欲しいの、・・・私は、この事をこの子達に伝えてもいいの? 今・・・あなたに会いたいよ・・・・・・ ジョウイの声が聞こえる・・・ 「それに、僕らは進まなくちゃ・・・」 一体・・・その道は・・・何処に向かっているの・・・? |