【 想 い A 】 「〜〜〜!きさま、何をしておる〜〜〜!」 ・・・へ?邪見?朝っぱらから、何をそんなに怒ってんの? 「邪見さま、どうしたの?」 りんも、きょとんとして邪見を見る。 「きさま!どこで寝ておるんじゃ〜〜〜!」 ああ・・・そういう事か。 見上げた先には、当然殺生丸。 この人に凭れ掛かって寝てたから、煩いわけだ。 「殺生丸が『そうしろ』って言ったんだも〜ん!」 「何〜〜〜!?」 って言うか、殺生丸の腕、まだ私の腰に回ったままなんですけど・・・ 「さっさと離れんか!」 「はいはい。・・・ホントに小姑なんだから・・・」 「何か言ったか?」 「いえいえ何も〜、りん!」 「はい!」 私が呼ぶと、嬉しそうに駆け寄ってくるりん。 う〜ん、可愛い♪ 「一緒に顔を洗いに行こ!」 そう言いながら、手を差し出すと、 「うん!」 とびきりの笑顔で頷いてから、恥ずかしそうにおずおずと手を握ってくる。 そうか・・・りんは、目の前で親兄弟を殺されて口がきけなくなって、1人で村外れに住んでたんだっけ。 『手を繋いで歩く』普通の子供なら、誰でもやってそうなこんな事で、 こんなに嬉しそうな顔をするなんて・・・切ないなぁ・・・ 「さま?」 おっと、いけない、いけない。 「遅くなると、また邪見が煩いから、急ごう!」 「うん!」 とりあえず、TシャツとGパンに着替える。 やっぱり・・・この方が楽だわ♪ 着物も結構好きなんだけど、歩きにくいんだよね・・・着慣れてないから・・・ でも、この着物も持ち歩くべきよね。 入浴する度に着物を・・・ってわけにもいかないし・・・私も嫌だしね。 「さま・・・殺生丸さま、まだかなぁ・・・?」 「ん〜〜〜ちょっと時間かかると思うから、一緒に遊んでようね。」 「うん!」 殺生丸と邪見は、灰刃坊の所へ行った。 闘鬼神を受け取りに・・・ りんと私はここでお留守番。 あそこは毒気が酷いから、私達が行くとひとたまりもないらしい。けど・・・ 今頃邪見は、真っ二つになってるんじゃ、なかったっけ? 「・・・ん?」 「さま、どうしたの?」 何だろう・・・気になる・・・ 「あのね、りん。ちょっとあっちの方が気になるから、見てくるわ。」 「え〜〜〜!?りんも一緒に行く!」 「でも、行ってる間に殺生丸達が戻ってきたら困るでしょ?」 「うん・・・」 「だから、りんはここで待ってて。それで殺生丸達が戻ってきたら、『ちょっと待ってて』って伝えて。」 「分かった。」 「それじゃ、行ってくるね。」 「さま〜絶対戻って来てね〜!」 振り返って、にっこり笑って頷くと、不安そうな顔をしてるりんが、ちょっと笑顔になる。 1人にされるのが嫌なんだろうけど・・・ごめんね、りん。 でも・・・どうしても気になるんだよね・・・何があるんだろう。 あれは・・・・・犬夜叉一行と灰刃坊。というより、闘鬼神。ついでに刃々斎。 「おい、かごめ!あんな所におなごが!」 え?あれ?・・・七宝が指差してるのは、私か? 駆け寄ってくる、かごめと七宝。・・・やっぱり、私の事か。 「こんな所にいちゃ危ないわ、すぐに逃げて!」 必死の形相のかごめと、うんうんと頷いてる七宝。 逃げろと言われてもなぁ・・・もうすぐここに、殺生丸来るしなぁ・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「あの・・・逃げないの?」 「え?あ、うん・・・大丈夫でしょう。」 「あのなぁ・・・大丈夫じゃないから、言っておるんじゃろうが!」 ・・・七宝に怒られた・・・ 「大丈夫よ。もうすぐ夜明けだし。」 「「 え ? 」」 私の目の前で、犬夜叉の姿が変わる。人間の姿から、半妖の姿へと。 そして、鉄砕牙の剣圧に耐え切れなかった灰刃坊が・・・ 「あなた・・・なぜ・・・」 「え?」 かごめが私に何か聞きたそうだったんだけど・・・ ドオォォォン! 「うわっ!」 「な、何?」 「・・・殺生丸。」 「「 えぇ!? 」」 「このような所に、あなたのような方がいてはいけません。」 へ? ・・・弥勒法師・・・ 手を握る必要がどこにあるんだ? かごめも七宝も、驚いた顔して殺生丸を見てんのに、この男は・・・ 「何でてめぇがここに!」 犬夜叉の声が響く。 「それはこちらのセリフだ。私はこの剣を追って来ただけ。それと・・・」 ギクッ! 「何故、こんな所にいる?」 うっ! 「私は、『待っていろ』と言わなかったか?」 そ、そんな恐い顔して、睨まなくてもいいじゃないよぉ! 「ごめんなさい・・・」 「来い。」 「「「「「 ダ メ(だ、よ、じゃ、です)!!!!! 」」」」」 ・・・は? これは・・・何事? 殺生丸の所へ行こうとした私の前に、立ち塞がる犬夜叉一行。 「ダメよ!本当に危ないんだから!」 「そうじゃ!お前の身が危険なんじゃ!」 えっとぉ・・・これは、一体どうすれば? ・・・やっぱり・・・殺生丸は、ただ黙って見てるだけ。 でも、背中を向けて立ち去ったりしない事が、ちょっと嬉しい・・・かな。 「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから。」 皆の顔を1人ずつまっすぐ見つめ、安心させるように、にっこり笑って頷く。 「・・・あなたの名前を聞いてもいい?私は、かごめ。」 「よ。」 「さん・・・また、会えるかな?」 「・・・多分ね。」 かごめの視線が、私の顔からだんだん下がって・・・あ、そっか。 私の今の服装は、TシャツにGパン。この世界にはありえないもの。 「その辺の話も、また今度ね。」 「ええ。」 かごめが頷いたのを確認して、殺生丸へと近付く。 「阿吽に乗って下がっていろ。私は少し確かめたい事がある。」 「・・・分かった。」 殺生丸が確かめたい事って言ったら、やっぱあれだよなぁ・・・ ・・・犬夜叉の匂いの変化・・・ 闘鬼神の邪気でさえも、ああも簡単に押さえ込んでしまう殺生丸。 一方、持ち上げる事さえままならない鉄砕牙で、戦わなければならない犬夜叉。 弾き飛ばされる鉄砕牙。そして・・・ 変化しかける犬夜叉。 その妖力は、殺生丸でさえも、一瞬怖れさせる程のもの。 「うわっ!?」 刃々斎〜〜〜!!! 殺生丸だけじゃなくて、私の方にまで火を吹きかけなくてもいいだろう! 「大丈夫か、?」 「あ、邪見・・・」 あんた・・・今まで一体何処にいたの? ま、いっかぁ。さてと・・・ 「殺生丸、戻ろう。りんが待ってる。」 腕をくいっくいっと引っ張りながら言うと、ゆっくりこっちを振り向き、歩き出す殺生丸。 「行くぞ、。」 「うん!」 「り〜〜〜ん!ただいま〜〜〜!」 私の声に、パッと顔を上げ、 「殺生丸さま!さま〜〜〜!」 嬉しそうに立ち上がり、駆け寄ってこようとするりんを、 「動くな、りん。」 そう言って止め、飛ぶ(?)殺生丸。 ・・・神楽か・・・ 「あやつは確か、奈落の・・・」 「うん。風使いの神楽、奈落の分身。」 「あんたなら、奈落を倒せるかもしれないねぇ。」 そう言って羽に乗り、飛び去ろうとする神楽が空中で止まり、 ・・・私を見てる? な、何? 「奈落は、あんたを諦めちゃいないよ。気を付けな!」 「っ!?」 奈落が・・・私を・・・諦めて・・・ない? それって・・・ あぁもう、神楽!言い逃げするなぁ!!! |