【 宿命 C 】






「ねぇ、キャロの街へ行くには、どっちに行ったらいいの?」

砦を出た所で聞いてみる。
だって、右を見ても、左を見ても、同じような草原なんだもん。

「あの燕北の峠を越えて、ちょっと行った所にあるんだ。」

ジョウイが指差した先にあるのは・・・・・山だよね・・・あれ・・・・・



あ、あれを越える・・・の?



さん、危ない!」
「へ?・・・・・はぁ?」

私を後ろ手に庇うの肩越しに見えたモノは・・・・・いわゆる毛むくじゃら。

これって・・・これって・・・やっぱりモンスターだよね!わぁ・・・何か感激かも!

さん!早く下がって!」

え?あっ!わっ!はい!ごめんなさい!
急いで2人の邪魔にならない所まで逃げる。一応周りも確認して・・・うん、大丈夫みたい。





モンスター達をあっさり倒したとジョウイ。
さっきの・・・格好良かったなぁ・・・2人が同時に前後から・・・勝負は一瞬でついていた。
あれ、絶対に協力攻撃だよね!何て名前なんだろう〜〜〜
きっと・・・単純で覚えやすい名前なんだろうけどね。





さん大丈夫?怪我とかしてない?」

心配そうに駆け寄ってくる2人を、笑顔で迎える。

「全然!それより2人とも強いんだね〜格好良かったよ!」

『エヘヘ』と照れながら笑うとジョウイに、

「それで、これからどうするの?」

と、尋ねてみる。それが1番聞きたい事なんだってば!

「まずは、リューべの村に行って、装備を整えよう。」

ジョウイの言葉に、一応頷くものの、何やら考え込んでる様子の

「・・・?」

ジョウイと顔を見合わせ、首を傾げながらの返事を待ってみる。
この様子だと、ジョウイにも分かんないみたいだし・・・



「うん・・・この間、リューべの村にお使いに行った時にね。」

・・・そういえば、お使いに行ったんだ〜って、嬉しそうに話していたっけ。
捕虜にお使いを頼むなんて・・・あいつららしいよなぁ・・・

「村の人達が、峠に化け物が出るって・・・」

「「化け物??」」

あら・・・ジョウイとハモっちゃったよ。でも化け物って?
私に言わせたら、さっきの毛むくじゃらだって、十分化け物なんだけどね・・・
きっと・・・レベルが違うんだろうなぁ・・・やだなぁ・・・

「僕もお使いの途中だったし、詳しい話は知らないんだけどね。」

肩を竦めるに、考え込むジョウイ。そして、相変わらずカヤの外の私。

「兎に角、1度リューべの村へ行こう。その化け物の話も聞けるかもしれないし。」

顔を上げてそう言うジョウイに、頷く。ふむ、決まったみたいね。・・・で、

「その、リューべの村って・・・どっち?」
「「あっち!!」」

2人が指差す先を見つめて、行く方向は決まったみたいだね・・・よしっ!行きますか!

いつまでも、こんな砦の近くに居たら、見付かっちゃうしね〜〜〜















「到着〜!さん、ここがリューべの村だよ。」
「へぇ〜〜〜」

リューべの村には、割と早く着いた。
砦から、こんなに近い所でいいのかぁ?と思いながらも、村の中へと入ると・・・何だ、ありゃ?

村の一角に、人だかりが出来てる。何なの?

「ねぇ、この間来た時も、あんな感じだったの?」

聞くと、ふるふると首を横に振る。
だよねぇ・・・こんなだったらその話もしそうだもん、って。

「行ってみる?」

ジョウイに思いっきり頷く、と私。だって・・・気になるし・・・気になるよね!





「へぇ〜占いやってるみたいだよ。」
「ナイフ回してる〜!凄いね!」

「そ、それより・・・!ジョウイ!火だよ!火だよ!火〜〜〜!!!」

さん・・・」
「落ち着いて・・・」

「だって、だって、火だよ、火を吹いてるんだよ!」

「「分かった、分かった。」」

2人に両方から肩をポンポンと叩かれる・・・2人とも、呆れてる?
でもね、でもね、大道芸って初めて見たんだもん!それに、3人共若いよね〜凄いや!



「そうだね・・・よし、そこのあんた!」
「え?」

すごいなぁ〜とか思いながら見てたら、、ご指名だよ。
こういうご指名ってさぁ〜ナイフ投げの的とかにされちゃったり・・・・・



・・・・・しちゃってるよ・・・・・



・・・大丈夫かな・・・」
「さぁ?」
さん!!!」

いや、だって・・・ナイフ投げてんのはあの女の子なんだからさぁ、私に聞かれ・・・あっ!!!

「痛っ!!!」

「「!!」」

・・・的になってる時に、動くんじゃないよ、・・・






「へぇ〜、3人で色々な村や街を廻ってるんだ。」

の手当てをしてもらいながら、3人と話をする。彼女達、旅の一団なんだって。


占いをやってたのがリィナ。ナイフを投げてたのがアイリ。
この2人は姉妹で、リィナが姉らしい。このリィナってのが、色っぽい娘なんだ〜
レオナとは、また違った色っぽさだけどね。アイリはボーイッシュで格好良いタイプ。
火を吹いてた男の子がボルガン。この子って身体は大きいんだけど、何か可愛いの。
憎めないタイプだね。


「ええ。この辺は殆ど廻ったので、そろそろ次の土地へ行きたいのですけど・・・」

そこで言葉を濁すリィナ。何なの?

「大丈夫だよ!化け物くらい、私1人で・・・」

・・・・・今、何って言った?化け物?

「ねぇ・・・リィナ・・・アイリ・・・化け物って・・・?」
「燕北の峠の化け物の事だぁ!」

ちょっと待て、ボルガン!今あっさりと、とんでもない事を言わなかったか?

「・・・化け物って?」

ジョウイ・・・こんな時、君は妙〜〜〜に冷静だよね・・・

それに・・・の手当て、途中だってば・・・





の手当てを終わらせ、化け物についての話を聞く。
そういえば、このリューべの村に来た目的の1つは、それだった気がする。
でも、彼女達も詳しい話は知らないらしく、情報は殆ど無いも同じ。
不安そうな顔をしているから、1つ私から提案してみるかな。

「別々に行くのが不安なら、一緒に行ったらどう?行き先同じなんでしょ?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あのさぁ・・・その沈黙は一体何なのよぉ!!!

ボルガンは何も考えてなさそうだけど、後の4人は暫く考え込み、そして、
アイリとリィナ、とジョウイがそれぞれ顔を見合わせ頷き合い、

「「「「ぜひ!!!!」」」」

・・・・・あんたたち・・・・・





とジョウイは『装備を整えてくる!』と言い残して走り去って行った。

「あなた達は大丈夫なの?」

達と一緒に行かず、私と一緒に村の入口の所で戻ってくるのを待っている3人に、
首を傾げながら尋ねる。

「ええ。私達は十分な装備をしていますから。」

にっこり笑顔で答えるリィナを見ながら、妙に納得してしまう。
だって、旅の一団って事は、色々な所へ行くわけだし、平和な所だけとは限らない。
今回だって、私達に出会わなければ、きっと3人で行くのだろうから。

この3人にとって、装備を整えるのは、ごく自然で、当たり前の事なんだ。





戻ってきた、ジョウイと合流して、いざ!出〜〜〜発〜〜〜!





・・・って、どっち?





「・・・さん・・・逆。」
「あら?」

どうりで目の前にあの山が見えないと思ったのよ。

・・・ジョウイ・・・言いたい事があるのなら、はっきり言いなさいね・・・

「またあの砦に戻っても、仕方ないんだし、ね!」

・・・さらりと、グサリとくる事言ったわね・・・

って・・・方向音痴・・・?」

アイリ・・・いちいち『?』付けなくてもいい!リィナも!
何なのよ、その憐れみに満ちた顔は〜〜〜!
ボルガンは・・・・・何にも考えてないみたいだね・・・何でもないよ・・・










目の前で繰り広げられるモンスター達との戦闘を、私はただ見学しながら峠へと向かう。
3人で旅しているだけあって、彼女達も強い・・・んだと思う。



何とか無事に峠へと辿り着いたんだけど・・・何、これ?



「・・・霧?」
「うん、そう。ここは何時もこんな感じなんだよ。」

応えてくれたジョウイに、ただ『ふ〜ん』とだけ頷いて、この霧を見つめる。

何か・・・気味悪い・・・嫌な感じ・・・









「だから!僕達はどうしても行かなきゃいけないんですよ!」
「お願いだから通して下さい!」

この燕北の峠は、ハイランドと都市同盟の国境になっているらしい。
同盟軍の兵士が2人ほど見張りに立っていて、『通してくれ!』とお願いする、
、ジョウイ、アイリに、ただ首を横に振り続ける。
彼等兵士にとっては、上からの命令ってのは絶対なんだろうなぁ・・・

なんて事を考えてたら、

「私に任せてください。」
「リィナ?」

今まで、私と一緒に傍観していたリィナが、兵士の1人と一緒に・・・・・

もしもし?リィナさん?

戻ってきた兵士は、いともあっさり通してくれると言う。

・・・リィナ・・・あなた・・・まさか・・・?

「・・・・・アネキ・・・また・・・」

呟くような声が聞こえたから見ると、アイリが複雑そうな顔をしてリィナを見てる。
って事は、やっぱり・・・
ジョウイの質問を、軽く流してるリィナを見て溜息をつくと、アイリと目が合った。
苦笑するアイリに、私も肩を竦める。あなたも大変ね。
でも、そのおかげで今はこうして通れてるんだから・・・はぁ・・・





霧は深いけど、とりあえず今の所は大丈夫みたい。

・・・とか思ってたら、アイリがいきなり立ち止まる。

「アイリ?」
「何か・・・嫌な気配だ・・・」
「ジョウイ・・・」
「うん・・・くる・・・さん、早く!」

は〜〜〜い!私は大人しく邪魔にならない所まで逃げます〜〜〜!
頑張ってね、5人とも!!!!!





はぁ・・・凄かった・・・・・

ボルガンは火を噴くし、リィナは火の・・・あれはお札かなぁ・・・?
兎に角、5人とも格好良かった〜!

モンスターは・・・あれって男なのか、女なのか・・・本気で気になる・・・










無事峠を越えた私達は、キャロの街へと辿り着く。

リィナ達とはここでお別れ。
でも、きっとまた会える、そんな気がするから・・・
『じゃあ、またね!』という挨拶を交わして別れる事にした。

リィナ、アイリ、ボルガン・・・また会おうね!楽しみにしてるよ!