【 偶然の中の必然 〜船酔い〜 】





う〜〜〜・・・気持ち悪い〜〜〜





私が赤髪海賊団の船に落ちて数日。
現在私は・・・船室にて死んでいる。





・・・船酔いで・・・





船酔いなんてした事なかったけど、今まで乗ってきたフェリーとか、
高速艇とか、水中翼船とかとは、意味が違う。

確かに大きな船だけど、何日も海の上っていう経験なんてないし、
何より・・・揺れるの〜〜〜!しかも!微妙な揺れ方なの〜〜〜!











「おい、生きてるかあ?」

部屋の中に入ってきたのは、ラッキー・ルウ。
ノックもしないで入ってきたけど、それに突っ込む気力もない。

相変わらず肉持ってるし・・・

「ん?何だ、食いたいのか?」

近付けるな〜〜〜〜〜!!!!!

・・・・・気持ち悪いんだからさぁ、今・・・・・




「おい!あんまりを苛めんなよ。」

そう言いながら入って来たのはヤソップ。ウソップのお父さんなんだよね、この人。

「苛めてねぇよ!」

・・・十分、苛められてます・・・

〜大丈夫か〜?」

開け放たれているドアから、皆が次々に顔を出す。
心配してくれるのは嬉しいんだけど・・・

皆が手に持ってる・・・そのお酒は一体何?

あ!ヤソップも持ってるし、ルウまで!!!





・・・・・お願いだから・・・・・





ここで酒盛りを始めるのは、やめてくれ〜〜〜!










結局、皆は何しに来たんだろう・・・

人が寝てるその横で、宴会始めやがって!・・・思わず部屋から出てきちゃったよ。

だって・・・お酒の臭いって・・・結構キツイ・・・










それにしても、船内どこに行っても、お酒の臭いがする気がするよ。
食堂の方に行ってみようかな・・・
ん〜〜〜別の臭いで、また気分悪くなるかもしれないなぁ・・・

甲板にでも出てみようかな。



「うわ〜〜〜風強い〜〜〜!」

んでもって・・・

「気持ち良い〜〜〜!」

こんな事なら、もっと早くに出て来れば良かったな。
まだ、胸の奥って言うか、胃の辺りと言うか、その辺が気持ち悪いけど、
船内にいるよりよっぽどマシ!

だけど、立ってるのは結構辛いかも・・・





「んっしょっと!」

これ・・・マストっていうんだっけ?その柱に背中を預けて座ってみる。

おっ!適度に風が当たって、気持ち良い〜♪

今、私の視界に入ってくるのは、青い空と白い雲と蒼い海と・・・船員達だけ。
ここにいる船員達って、いわゆる下っ端達・・・なんだろうなぁ。



この人達って、やっぱりシャンクスに憧れて、赤髪海賊団に入ったのかな。
一生懸命、この船を捜して・・・とか? あ、待てよ、

どうやって、赤髪海賊団の一員になるんだろう?

船を見付けても、普通は近寄れないんじゃあ・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・分からない・・・・・



「ふわぁ・・・」

ん〜〜〜、くだらない事考えてたら、眠くなってきた。
そういえば、船酔いし始めてから、殆ど寝てないもんなぁ・・・
うとうとしかけると、絶対に変に揺れて、目が覚めちゃってたから。

ちょっと寝ちゃおうかな・・・うん、寝ちゃおう・・・










・・・あれ?何だろう・・・

・・・温かいな・・・

・・・この場所だけは、きっと何があっても大丈夫・・・










「ん・・・」

・・・あれぇ、本当に寝ちゃってたみたい・・・

「起きたのか?」

優しい声が耳元で聞こえてくる。





・・・耳元で?・・・はい?





「うわっ!シャンクス!」

顔を上げると、あまりにも間近にシャンクスの顔があり、思いっきり焦る。

この状況は一体何〜〜〜?

シャンクスの腕が私の肩に回ってて、私は完全にシャンクスに身体を預けて眠ってた感じ。
しかも、私の身体には、黒いマントが掛かってる。



・・・シャンクスに守られて眠ってたみたい・・・



「顔色は大分良いな。気分はどうだ?」

私の顔を覗き込みながら、シャンクスが聞いてくる。
そういえば・・・気持ち悪いの無くなってる。

「大丈夫みたい。」
「ふ〜ん・・・そうか、俺の腕ん中はそんなに気持ち良かったかあ。」



・・・・・何ですと?



今までの気遣うような優しい声から、思いっきりからかいを含んだ声に変わった。
見上げると、ニヤニヤ笑ってる。この顔は・・・
何だか、と〜ってもイヤな予感がするのですが・・・



「何なら・・・今夜からずっと、俺の腕の中で寝るか?」



グイッと抱き寄せられ、耳元で囁かれる。

「シャンクス!!!」

真っ赤になった顔で怒鳴っても、迫力なんてあるはずもなく、
シャンクスは笑いながら、船内へと戻って行く。

ちくしょう・・・また遊ばれたぁ!










それにしても・・・私の船酔いは何処へ行っちゃったんだろう?

少し眠ったから、気分が良くなったのかなぁ。それとも・・・

乗り物酔いってのは、精神面が結構作用するって、聞いた事ある。
つまり、不安な気持ちが、船酔いさせてたって事・・・かもしれない。
だから、シャンクスが傍に居てくれて、『ここは安心できる場所だ』って、
私の身体と心が理解して・・・それで・・・うわぁ、何か恥ずかしい・・・





ぐぅ〜〜〜

・・・私のお腹が、『お腹がすいた』と訴えかけている・・・

最近、殆ど何も食べてないもんね。食堂にでも行ってみようかな。



船内に戻ると、また少し気持ち悪くなってきた・・・
どうしてこう、お酒の臭いがするの〜?
まぁ、今は少し敏感になってるのかもしれないな。

食堂のドアを開けると・・・





私の部屋でやってた宴会が、こっちに移動してるよ・・・





あっ!ベックマンやルウに、ヤソップもいる!
彼らの顔を見た途端、今まで気持ち悪かったのが、スーッと引いていく。

私って・・・とんでもなく現金な奴なんじゃないか?



、大丈夫なのか?」

私が近付くと、ベックマンが気付いてくれて、私の座るスペースを作ってくれた。
そこに座りながら、

「うん。大丈夫になったら、お腹すいちゃって。」
「ん?これ食うか?」

あのね、ラッキー・ルウさん・・・いきなり肉なんて食べないって!

「んなの食わせんなよ。ほら。」

この船のコックのおっちゃん・・・兄ちゃん?まぁ、どっちでもいいや。
が、私の前にスープを出してくれる。

「暫く食ってなかったからな。少しずつ食えよ。」
「うん!いっただっきま〜っす!・・・美味しい!」

一気に食べたかったけど、言われた通り少しずつ食べてたら、

「旨そうだなあ・・・なあ、俺にもくれよ!」

何処からか声が飛んできたんだけど、

「ダメだ。」

一言で切り捨てられた。何でダメなんだろ?

「何でダメなんだよ!」

「これは、専用なんだよ。」

・・・・・・・・・・へ?私専用?このスープが?

「いつが来ても良いように仕込んどいたんだからな。味わって食えよ!」
「うん!ありがとう!」





私がこの船で船酔いする事は、2度とないと思う。