【 魂の記憶 A 】





「さぁ、皆に紹介するから行こう。」

そうハオに促されて、テントから出てみたら・・・うわぁ、見た事ある顔ばっかり。

「彼女がだ。皆、宜しく頼むよ。」

ハオに紹介され、とりあえずペコリと頭を下げる。

「貴女が様ですか。」





・・・・・・・・・・さまぁ???





「それに関しても、時期に分かるよ。」

肩にポンと手を置かれ、降ってくるハオの声。

・・・私って、そんなに思ってる事が顔に出るのかなぁ?いや、よく出るとは言われるけどね。
ん?ハオの手が小刻みに震えてる?・・・ってか、笑ってるよこの人・・・
私って、そんなに・・・あ、違う・・・





ハオって、人の考えてる事が読めるんだった。霊視・・・だったっけ、確か。





私がそう思った途端、ハオの身体がピクリと動き、震えが止まった。

そういえば、ハオはこの力、嫌いだって言ってたっけ・・・

でもなぁ・・・聞かれたくない事を考えてる時だって当然あるんだし、
そういう時は、聞かないでいるって事も出来るのかなぁ?
いや待てよ。それをどうやってハオに伝えるわけ?

『今から聞かれたくない事を考えるから、読まないで』って言うの?

そんなの、好奇心に負けちゃって、聞くに決まってるじゃない!
どうすればいいんだろう。ハオの耳を塞ぐ?・・・って、関係ないか。



「くくく・・・あっはっはっはっは・・・」



ハオの笑い声で思考がストップする。こいつ・・・聞いてやがったな。

「笑い事じゃないのよ、ハオ!切実な問題なんだからね!!!」
「くくく・・・分かったよ、努力する。」

まだ肩を震わせながら、何を言ってやがる。でもここは一応・・・

「好奇心に負けない?」
「だから、努力する。」

それって・・・聞く可能性の方が高いって事じゃないかぁ!!!





「ハオ様・・・様・・・?」

ハオって笑い上戸だったかなぁとか考えてた私の耳に、遠慮がちにそれでいて訝しげな声が届く。
ふと見ると、皆が怪訝な顔をしてこっちを見ている。まぁ・・・オパチョとラキスト以外だけどね。

「何でもないよ。」

ハオにそう言われてしまうと、もう誰も何も言えなくなる。

様。」
「ん?」

下から声がする・・・って、オパチョか。
そういえば、オパチョも最初から『様』って呼んでたっけ、気にしてなかったけど。
これにも『魂の記憶』ってのが関係してるのかな・・・私に何を思い出せと?

「ハオ様、笑ってる。」
「ああ、うん。笑ってるね。」

別に、笑わせたかったわけじゃないんだけどね。

「オパチョ嬉しい。」

満面の、本当に嬉しそうに笑うオパチョを見てると、何かもういいやって思ってしまう。
だって、私も同じだと気付いたから。

「そうだね、私も嬉しいよ。」

私がそう言うと、オパチョがまた嬉しそうに笑った。















「ああ、そうそう。はい、これはのだよ。」

そう言って、ハオから渡された物は・・・

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はい???これって・・・





オラクルベル!?!?!?





「ちょっと待ってよハオ!私、シャーマンじゃないのに、どうしてオラクルベルが?」
「それは、君が知らないだけ。」

知らないだけって・・・そういう問題じゃないでしょう・・・

「それに、これはパッチから貰うって言うか、預かる物だよね、それをどうしてハオが?」
「君が僕のだから。」

ぼ、僕のって・・・って、赤くなってる場合じゃないって!それって答えになってない!

「流石です、様。」
「は?」

どこからか、感嘆の溜息と共に、声が聞こえてきて、思わず振り返る。流石って・・・何が?

「こちらに来て間も無いというのに、そこまでご存知とは。」

ラキスト・・・こいつ、逃がしたわね・・・





いつの間にか姿を消したハオ。ちくしょう、逃げられた。





でも、私がこのオラクルベルを身に付けるのは、何かが違うと思う。
持霊なんていないし、当然オーバーソウルも出来ない。ってか、そんな体力ない。

他の人達のように戦う事なんて・・・・・戦う・・・・・戦う!?

これって、私にシャーマンファイトに出場しろって事!?そんなの無理に決まってるじゃない!

「ハオ!!!」

って、逃げられたんだったわ。

「オパチョ!」
「何、様?」
「ハオが何処にいるか知らない?」
「オパチョ知らない。」
「そっか・・・」
「でも。」
「え?」



様、分かるよ。」



私に分かる?ハオの居場所が?どうして?って言うか、分からないから聞いてるんだけど・・・
でも、オパチョの言葉には意味がある。この子は嘘なんかつかない。・・・と思う。















私には分かる・・・ねぇ。

なんとなく歩いてるけど、本当にこの方向にハオがいるかどうかなんて、分からない。

けど・・・うん、なんとなく。

身体が、意識がこっちの方向を向いている。

ただ、それだけ。















・・・・・うそ・・・本当に・・・居た・・・・・















「ハオ・・・」
「やあ、。」

全く驚いた様子もなく振り返るハオ。
私がここに居る事に、何の疑問も抱いてない、当たり前のような顔をしてる。

って、そんな事より、もっと切実な問題があったんだ。

「私に、SFに出場しろって言うの?」
なら大丈夫さ。」

だ 〜 か 〜 ら 〜 その自信満々な答えの根拠は、一体どこにあるのよ!

「巫力って分かるよね?」
「まぁ・・・一応。」
「このオラクルベルが、それを数値化出来るって事も・・・」
「知ってる。」

やり方は知らないけど・・・アニメでピリカが言ってたけど、覚えてないし。

「おいで。」

呼ばれるままにハオの隣に座り込み、そのオラクルベルを覗きこむ。

「1,250,000・・・これって、ハオの数値だっけ。」

大体他の人達が、3,000〜8,000くらいだから、ハオがどれだけ凄いのか分かる。

「そして、これがのだよ。」

ん?私のなんて・・・・・・・・・・・は?

「な、何よ、この数値!!?」
の巫力。」
「・・・壊れてるんじゃない?」
「じゃあ、自分のでも確かめてごらんよ。」

ハオに教えてもらった通りに押してみる・・・・・



・・・同じだ・・・



他の人達のも見てみようかな。一応、私が知ってるのは・・・
葉達じゃ駄目だよね、彼らはこれから上がるんだし。今の段階の巫力は知らない。
カナ達は、今もあまり大差ないはずだよね。えっと・・・

カナが7,500・・・マッチが7,000・・・マリが8,000・・・ペヨーテが3,000・・・

ザンチン7,000・・・ターバイン6,500・・・ビッグガイ1,500・・・ボリス3,000・・・

確か、どれもこんな感じだったはず・・・って事は・・・オラクルベルが壊れてるんじゃないって事!?

でも・・・だって・・・そんなのって・・・こんな事って・・・










私の巫力・・・ハオと殆ど同じ・・・










「まあ多分、が異世界から来たってのも、関係してると思うけどね。」

それで納得出来るような数字じゃないと思うんだけど・・・
どっちにしろ、使い方が分からないんだから、宝の持ち腐れだけど。

あっ!・・・って事は・・・

「・・・だから?」
「ん?」
「だから、私を呼んだの?」
「・・・違うよ。」

そう言って笑ったハオが、切なそうに見えたのは・・・気のせい?